「母の日参り手紙コンクール」草刈正雄が母への思いを語る
4月23(月)、東京都・千代田区のワテラスホールで「『母の日参り』パートナーシップ2019年度共同プレス発表会」が行われ、「第2回『母の日参り』手紙コンクール」の金賞作品が発表された。
「母の日参り」とは、ゴールデンウィークから母の日にかけて、お墓参りに行き、亡き母をしのぶ祈りの習慣。2017年に日本香堂をはじめとする12の企業・団体が「『母の日参り』パートナーシップ」を結成し、「母の日参り」の普及に取り組んでいる。手紙コンクールはその活動の一環で、亡き母への思いをつづった手紙を募集するもの。今年2月からスタートし、合計1322編集まった。
今回の選考委員長をつとめたのは俳優の草刈正雄さん。現在、NHKで放送中の連続テレビ小説『なつぞら』に、広瀬すず演じるヒロインの養祖父、柴田泰樹役で出演している。草刈さんは、亡き母・スエ子さん(享年77)に女手ひとつで育てられたため、母への感謝の気持ちは人一倍強い。
母親との思い出を聞かれると「強い、こわい母でした。ちょっと悪いことをするとバットを持って追いかけてきました」と苦笑い。また、「母親からは『ありがとう』『ごめんなさい』を素直に言える子になりなさいと教わった。若いころは分からなかったけれど、年を重ねれば重ねるほど、素直な気持ちでいる人がかっこいいと感じる」と話した。もし母親に会えるなら、という質問には「俳優として活躍している姿を見せたい」と答えた。
選考を振り返り、「年のせいもあるのか、涙腺が弱くなってずっと泣いておりました」と語った。金賞受賞作については「作品に登場するばあちゃんと私の母の姿が重なり胸にしみました」とコメント。
今回のコンクールで集まった手紙は、作品集として発刊されることが決定した。作品集には、手紙とともにグリーフケアの専門家のインタビューを収録。手紙の書籍化プロジェクトを担当するライター・ブックプランナーの佐藤俊郎さんは「グリーフケアや生きる力につながる意義のある本を目指したい。読む人が母親の存在を改めて考えるきっかけになればうれしい」と抱負を語った。発刊は7月末を予定。
金賞受賞作品
『ばあちゃん(母)、素直になれずゴメン』
P.N. 頑張ってるお父さん(男性・49歳・新潟県)
母が十数年前に他界した。
歳を重ねても唯一、頭があがらないのが母だった。
娘はそれを敏感に感じとり、私がカミナリを落とすと、よく「婆ちゃんに言いつけてやる」等と小さな抵抗をみせた。
母は孫娘を溺愛し、娘も超がつく程の婆ちゃん娘だった。
その娘が今年から新潟を離れ大阪で1人暮らしを始めた。
私は事あるごとに電話をするのだが、良くできた娘で煙たがらず近況を伝えてくれる。
お父さん、大丈夫だから心配しないでと。
私も若い頃、県外就職組だったので母からよく電話を貰った。
その当時、自分は男だというプライドと若さも手伝って、母に対して随分とつっけんどんな態度を取ったものだ。
しかし今こうして娘の心配をしていると、母がその当時かけてくれた言葉が、時空を超え私の心に突き刺さってくる。
人生のゴールがそろそろ見えてきた今頃になって、30数年前にかけて貰った母の言葉に感謝し涙する。
生きている内に、もっと母と向き合うべきだった。
私達には言葉がある。愛を伝え、感謝を伝えるその言葉で、くだらない事でも日常の小さな出来事でも、もっともっと会話をするべきだった。
孝行したい時に親はなし ―― そんな当り前の言葉が身に沁みる。
ある日、大阪の娘から電話があった。
「お父さん、母の日参りって知ってる? 母の日に新潟に帰るから、そしたら婆ちゃんのお墓参りに行こう。婆ちゃんの好きだった栗羊羹を持ってさっ」
頬から流れた涙が受話器を伝ってポロリと落ちた。
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