魅力的なキャラクターを作ろう!:開催拡大の今がチャンス
ゆるキャラブームで開催数拡大のいまが絶対チャンス
2000年代に入ってから、マスコットキャラクターの公募開催は、年を追うごとに盛んになっている。
21世紀を迎えたことで推進された市町村合併。それによって新たに誕生した市町村が、それぞれの新しいシンボルを必要としたことが、開催数の増加に寄与したことは間違いない。
それに拍車をかけたのが、いわゆる「ゆるキャラ」の流行だった。キャラクター公募の増加に伴って生まれてきた、「クオリティが高いとは決して言えないが、郷土愛に満ちあふれた『ゆるい』かわいらしさを持つキャラクター」の流行は、イラストレーターのみうらじゅんがそもそもの火付け役。
2008年には「ゆるキャラ」という言葉自体が新語・流行語大賞にノミネートされるなど、ブームは最高潮となり、それと前後して「ひこにゃん」(滋賀県彦根市)、「せんとくん」(奈良県)などの、キャラクター界の大スターが生まれていった。「ゆるキャラブーム」はその後も緩やかに続いており、ゆるキャラさみっと協会主催の「ゆるキャラグランプリ」も年に一度、行われている。
こうした流れを受け、現在も数多くの自治体、公共団体、企業がマスコットキャラクターの公募を開催している。その目的はさまざまだ。自治体による募集では、その地方の認知度アップのためのシンボルとしての役割や、社会的な運動を推進するための旗ふり役としての役割を担わされることが多く、企業や団体の募集では商品の認知度やイメージアップが目的とされることが多い。国体やねんりんピックなど、国をあげてのレクリエーションイベントでは、開催地となる地方の自治体が毎年入れ替わりで、その年の大会認知度を高めることを目的としたキャラクターの募集を行っている。
マスコットキャラクター公募の魅力は、なんといっても「多くの人に長く愛される充実感」だろう。昨今は行政改革があまりに盛んなため、自治体の合併や団体組織の統廃合に伴い、それまで当該部署のマスコットとして使用され、そこそこ認知もされていたキャラクターがあえなく消えてしまうといったようなケースも少なくないが、それでもある一定期間、自分の生み出したキャラクターが、大きな目的の「顔」となったうれしさは消えない。多くのデザイン系公募の受賞者が語っている事実である。
絵のクオリティより訴求性とインパクトが大事
ゆるキャラのブーム以降、マスコットキャラクターの公募数は激増した。そのため、賞金や賞品のレベルには幅がある。そもそもこうしたデザイン系の公募は、それなりの専門的な知識とテクニック、制作時間を必要とするため、20万〜30万円の高額な賞金レベルのものが多かったが、昨今のマスコットキャラクター公募では3万〜10万円あたりが相場と言えそう。以前より相場は下がっているが、その分、公募開催数は増えているので、チャンスは広がっていると言っていいだろう。応募数を見ると、1000点の大台には届いていない公募が多い。デザインや絵を学んだ人の応募が多い少数精鋭型の公募ではあるが、結果を見ると、絵心のなさそうな人の受賞も数多く見受けられる。ビジュアルのクオリティよりもインパクト、なによりも目的を体現した訴求性が受賞へのカギ。しっかりと募集要項を読み込んで、主催者の求めているものを把握して臨めば、「絵はシロウト」の人でもチャンスあり! なのが、マスコットキャラクター公募なのだ。
アニメになったときに親しんでもらえるインパクト
水島新司、高橋留美子といったマンガ界の巨匠を輩出している新潟市は、マンガコンテストの「にいがたマンガ大賞」を既に14回も開催するなど、マンガ・アニメのまちとして名高い。そんな新潟市をさらに広めるためのキャラクター募集。主催の新潟市 文化観光・スポーツ部 文化政策課に聞いた。
「広く全国からご応募頂いた477点を、市の文化政策課の職員や新潟ゆかりのマンガ家、デザイン関係の有識者などからなる審査スタッフが、1次で38点に絞り、その中から最終的に大賞1点、入選2点を選びました。受賞の決め手となったのは、やはりヴィジュアルのインパクト。オリジナルのPRアニメを作ることは決まっていたので、アニメ制作に繋がりやすい、そこで動きがあっても万人に受け入れやすいキャラクターを求めていたのですが、大賞作品は、パッと目を引く可愛らしさと、動いたところを想像したときに浮かんでくる愛らしさが際立っていたと思います。2月の25、26日に「にいがたアニメ・マンガフェスティバル」という大きなイベントがあるのですが、そこに登場させるべく、今回の大賞キャラクターの着ぐるみを今、作っています。まだ制作途中ですが、ものすごく可愛らしい出来上がりになりそう。早くお披露目したいですね」
キャラクターとして実際に使用される未来。
それが目に浮かびやすい親和性が、今回の勝因。確かに、キャラクター公募では大きなポイントと言えそうだ。
「マンガ・アニメのまち にいがた」サポートキャラクター 花野古町&笹団五郎
自分の感性、タッチに合う公募を探すことから始めよう
静岡県・伊豆は河津町にある「河津バガテル公園」は、フランス・パリ市ブローニュの森にあるバガテル公園と友好提携したバラ園。
18世紀のフランス庭園を再現した空間で、約千百品種のバラが咲き誇る「ローズガーデン」だけでなく、ガーデニングショップ・レストランなどのショップも充実しており、一年中楽しめることで人気がある。昨年開園10周年を記念して、マスコットキャラクターを広く募集した。
公募を主催した河津町まちづくり推進課に話を聞く。
「295点というたくさんの応募数には驚きました。テーマ設定を複数設けたので、これほど多岐にわたるデザインが来ることは予想していませんでした。1次審査は所属課の5名で行い、57点を選考しました。町長・観光協会長・バガテル公園支配人をはじめとする公園関係者が最終審査員となり、57→8→3というように絞って、最優秀賞作品1点・優秀賞2点を選びました。
〝末永く愛される公園にするために〞というのが大きなテーマでしたから、やはり親しみやすさがいちばんのカギでしたが、応募していただいた皆様もそこは心得ており、甲乙付けがたく、最終審査は本当に難航しました。その中で受賞作が選ばれた大きな要因として、配色の良さにあったと思います。バラを頭にするという構図はいくつかあったのですが、受賞作は温かみがすぐに目に飛び込んでくる配色でした。
「ガッテルくん」の着ぐるみも制作しましたが、子供たちに大人気です。私も一度中に入ってみて、実感しました。作者の思いが一目で伝わるマスコットキャラクターだと思います。」
このページでは紹介できないのが残念だが、キャラクター公募では「色味」も大切な要素なのかも。頭に入れておきたいポイントだ。
※本記事は「公募ガイド2012年3月号」の記事を再掲載したものです。