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つくログ

東妻蛍
2025/12/03 23:53
#第43回どうぞ落選供養『大きな間違い』　刑事になってから嫌な事件には何度も遭遇してきた。しかし家族内での殺人事件ほど嫌な気分になるものはない。そう思うのは俺が家族に愛されて生きてきたからなのだろうか。　今俺が担当している事件も家族内での殺人事件だ。年老いた父親が壮年の息子を殺したという。しかしどうにも犯行の理由が分からない。息子の優太は独身ではあったがちゃんと働いていた。だから自分が死んだ後の息子の生活を心配したというわけではあるまい。そもそも被疑者である丹野昭二は健康そのものだったし、優太も健康に問題はなかった。　なら家族内で関係が悪かったとか。それも考えたが、周囲にどれだけ聞き込みをしても仲がいい親子だったという話しか出てこない。近所の人間はみんな「どうして昭二さんがあんなことを……」と口をそろえて言っていたが、こちらもそれを聞きたくて仕方がない。「何か分かりましたか？」「いや、何の進捗もない」「現場の状況からも丹野昭二の犯行は明らかです。それに丹野は犯行を認めてるんだから、送検はもうできるでしょう。動機なんて俺たちが確認する必要あります？」　確かに部下の言う通り、俺たちの仕事は殺人事件の被疑者である丹野を確保して容疑を固めた時点で終わっている。しかしそれでもどうしても気になることがある。丹野が独り言でずっと呟いているあの言葉が。「丹野の言う『間違いだった』ってのがどうにも気になってな。もしかすると丹野は他に殺したい相手がいて、そいつと息子を間違えたんじゃないか」「ああ、なるほど。だからって情状酌量にもならなくないですか。身勝手すぎるでしょ」「まあ、そうだが……」「じゃあもう終わりにしましょうよ。後は検察の仕事ってことで」　世代の問題なのか、それとも個人の問題なのか、悪い奴ではないのだが、部下の林はやけに薄情だ。ため息を吐いて立ち上がる。そんな俺を林は何も言わずに見送った。俺が丹野の事情聴取に行くときっと林は分かっていて、無意味なことをと呆れていたはずだ。今更丹野を詰めたって、事件をひっくり返すような新事実なんて何も出てこない。俺だってそんなことは分かっている。だが丹野の周囲に何か問題があったのなら、それを確かめておきたかった。普通に生活していて、殺意を抱くということがないわけではない。しかし人が本当に殺人を犯すに至るだけの大きな問題が丹野の周囲にあったなら、別の事件につながりかねない。「……今更なんですか。優太を殺したのは間違いなく私です」「その件だが、お前が言ってる『間違いだった』の言葉の意味を聞こうと思ってな」「……間違いだったんですよ。全部」「何がだ。誰かと優太さんを間違えたのか？」「とんでもない。私は間違い探しだけは得意なんです」「間違い探しぃ？　お前は何を言って」「そう、そうだ。間違い探し。刑事さん、今日は何曜日ですか？」「今日？　土曜だが……」「そうか……。じゃあ、明日。明日になったら新聞をいただけませんか？」「新聞？　自分の事件に関する記事は読めないが、それ以外なら……待て。何か、明日載るのか？」「載る？　まあ、そうですね。日曜にはいつも載ってます」「いつも？」　丹野が新聞を要求する理由が知りたかった。それも今日ではなく明日の新聞。丹野が本当に殺したかった人間のことでも載るのかもしれない。そう思ったが、丹野の返事は要領を得ない。疑問符を浮かべる俺を見て、丹野は今まで見たこともないほどニンマリと笑みを浮かべた。「日曜の新聞には間違い探しが載ってるでしょう。私はあれだけが楽しみで生きてるんです」「間違い探し？　ああ、そういえば載ってたような？」「それをあいつ。俺が楽しみにしてるのを知っててニヤニヤと……ああ、間違いだった」　丹野の言うあいつとは誰だ。あれ、そういえば丹野が起こした事件は確か日曜だった。……まさか。「お前、間違い探しを先にやられたからって、息子を殺したのか……？」「そうですよ。ああ、あんな息子、生まれてきたのが間違いだった。私の人生の汚点ですよ」　さも当然のように言ってのける丹野の言葉が理解できない。俺は化け物を見るような目でただただ丹野を見つめるしかできなかった。
齊藤　想
2025/12/03 22:38
テレワーク中に、テレワーク川柳を応募してしまいました。真面目に仕事しろと怒られそう（汗）第11回　テレワーク川柳 https://koubo.jp/contest/276570
コモドモネ
2025/12/03 21:08
※注意※小説のつもりはなく、単に書き出しておきたいから書いているだけです。メモみたいもの！　１週間前の天気予報では『晴れ』だった。 5日前の天気予報で気温が少し下がると知った。 3日前の天気予報では場所によっては雨になるかもと言っていた。当日、ざんざん降りの雨だった。１週間前、好きな人からデートに誘われた。 5日前、その人から「冬の海を見に行こう。車出すよ」と連絡が来た。 3日前、「大丈夫、天気予報が雨でも、大体晴れるんだ！」と言っていた。当日、「ごめん、私楽しみにすると大体大雨になるの」と白状した。初めての人たちは「まさかぁ。偶然だよ！」と笑ってくれる。よく知っている人たちは「さすが！」と笑ってくれる。好きな人は……「マジか。もっと早く言えよ」と言ってため息をついた。もっと早く言えば海ではなくなったの？それともこのお誘いごと消えていた？他の人と同じように笑ってくれた？　楽しみにしなければよかった。「楽しみだね」というLINEにも、「全然」と言えばよかった。「仕方ないから嫌々ながらも行ってあげますよ」と思い込めばよかった。冬なのにワンピースなんか買っちゃって、年甲斐もなくウキウキしなければよかった。好きになんてならなければよかった。　黙り込む好きな人の横顔を見るのが怖くて、愚かな自分を呪っていると、その人は「じゃあ、ここ行かない？」とスマホを見せてきた。海の近くにある、日帰り温泉。露天風呂付き。「冬だけど、ちょっとくらいなら海で遊んでも平気かなって思ってたんだ。だってさ、本当に行きたいのはこっちだったから。でも、濡れる予定がなくなって、なんて誘ったら下心感じさせないかって色々考えたんだけど、よく考えたらこんな寒くて、雨降っている日ならむしろ行きやすいじゃん？雨サイコー！みたいな？」好きな人は、温泉に誘うための口実に海に誘ってくれて、温泉に誘う口実を探すために今頭を悩ませていた。「っていうか、楽しみすぎて雨降らせるとか、笑える。何それ？そんな非科学的なことありえないっしょ」そして他の人たちのように笑っていた。「何度か繰り返されると、嘘じゃないってわかるよ。春に京都で雹が降ったこともあるんだから」「楽しみすぎて？」「そう、楽しみすぎて」「何それ可愛い」ケラケラと笑うその人のことを再度好きになった。つい数分前まで『好きになら泣けばよかった』って後悔したばっかりなのに。そうだ、この人だって悪い。あんな言い方をしたから不安になったんだ。もっと言い方ってものが……ああでも。　「さっき難しいこと考えてたでしょ」温泉に浸かりながら、その人はそう言って足を伸ばした。露天風呂は雨のせいか人がいない。「私、つい言い方キツくなっちゃうんだよね。よくそれで人に誤解される。でも、慣れてよ。実際には悪い方に考えていることなんて稀だから。だってあんたは女と付き合うの初めてでしょ？いつものようにすすめたら上手く行かないからもしれない。だから私も手探りなんだ。あんたがちゃんと自分の家族や友達に私のことを【恋人】です。って言えるようになるまではさ、慎重にするが故の間違いなんだ」カップルが多い日帰り温泉で、堂々と手を繋いで女湯の暖簾をくぐっても、誰も何も言わない。気づいてないだけか、そんなことを気にしない世の中になったからか。　「私たち、恋人なの？」真面目な顔して聞くと、その人は目を見開いて口をぱくぱくとさせた。餌をねだる鯉のようだ。「そっから？！え？！嘘でしょ？？わ、わた、私の、え、えっ！」大慌てなその人を見て、言葉足らずな人なんだ、しょうがない。なんて考えながらも、ああ、やっぱり好きだな。と改めて思ったのでした。 ※※※ 仕事終わり、明日は休み。天気微妙。予定あり。ここはシェアラウンジ。カレーパンうまい。急に思いついたのでメモメモ。みたいなノリです。はい
アクティヴ如月
2025/12/03 18:44
こんばんは🌃 今日は急に寒くなり、ついでに世間の風も冷たくて（笑）ですが、「小説でもどうぞ」で、皆さんシェアされていて、あたたかい雰囲気に癒されております☺️ 私は七日締め切りの俳句三句を考え中です。給料が入ったら、思いきって新しい大歳時記を自分へのクリスマスプレゼントにしようかな？とも考え中です。急ぐ事もない大歳時記ではありますが。自分へのクリスマスプレゼントの候補に、ヨシタケシンスケさんの「あるかしら書店」も頭にうかびます。何度も立ち読みしていますが、ワクワクしてきます。その他、絵本「モモ」、「スノーマンクリスマスのお話」もいい勝負の候補。贅沢な悩みですが、じっくり吟味します。購入した俵万智さんの「アボガドの種」を読了しました。今までの俵万智さんの歌集で、一番好きかも😄　コロナ禍の短歌も詠まれていて、当時を思い出したり。本文にある『ホスト万葉集』は、話題になったのもあり、購入して読んだ記憶があります。　短歌も、いいですね。今日も一日、お疲れ様でした✨
齊藤　想
2025/12/03 16:40
#第50回どうぞ落選供養とりあえずアップしておきます。ユーモアを目指しましたが、さすがに苦しかったかもしれません（汗）『まちがいだらけの少女』　年の瀬も押し迫った、大晦日の夜。　いまにも雪が降りだしそうな寒空の下で、靴も履かずにお客様を呼び込む少女の姿があった。　服はつぎはぎだらけ。防寒具は薄いカーディガンのみ。それでも、少女は体を震わせながら、忙しそうに道を行く大人たちに声をかけ続ける。「火はいりませんか？　どうか火が欲しい人はいませんか？」　少女の身なりに哀れをもよおしたのか、ひとりの紳士が立ち止まった。「ちょうどタバコが吸いたいと思っていたんだ。ひとつ火をもらおうか」　そのとき、ひときわ強い風が少女と紳士の間を通り抜けた。「えっ、いまなんとおっしゃいました？　風が強くて、よく聞こえなくて」　紳士は、もう一度、大きな声で言った。「火が欲しいと言ったんだ」「承知いたしました。さっそく、ご用意いたします」　少女がカゴから取り出したのは、火打石だった。少女が石を打ち付けて、カチカチと火花を散らす。生まれたばかりの火花は、寒風に吹かれて飛んでいく。「もうちょっとお待ちください。もうすぐ火ができあがりますので」　少女の様子に、紳士はあきれた。「おい、それじゃあダメだよ。間違いだね」「間違いですか」「原始人ではあるまいし、火打石でタバコを吸いたいというひとはいないよ。もっと手軽で、便利なものにしたほう売れるよ」「ダメでしたか」「そう、間違い」　少女はしょんぼりとした。　その様子を見て、紳士は火打石を少女から買い取った。つぎはぎだらけの服に同情したのもある。「これでパンでも買って帰りなさい」「はい」と少女は答えた。けど、この程度の稼ぎで帰るわけにはいかない。　紳士が見えなくなると、少女はもらった硬貨を握りしめて、新しい商売道具を仕入れるために小物屋に走った。　雪がちらつき始めた。それでも少女は声をからし続ける。世の中は金だ。お金を稼がないと生きていけない。　少女は穴の開いた手袋をこすり合わせながら、道行くひとに声をかける。今度こそ成功するはず。「火はいりませんか？　どうか火を欲しい人はいませんか？」　シルクハットの紳士が、少女の前で立ち止まる。「ちょうど火が切れていたんだ。ちょっと火をもらおうかな」「分かりました。いますぐ用意します」　少女はふところから、さっと火のついたタバコを取り出した。そして、思いっきり息を吸う。少女が咥えたタバコの先端が、赤く輝く。　少女は、キスをするかのように、口先を紳士に近づけた。「これなら手軽で便利でしょう。さあ、はやく火を付けてください」　紳士は驚いた。「ちょっと君、ここは路上喫煙禁止区域だ。そんなことをしたらダメじゃないか。それに君は二十歳以上には見えないぞ」「えっ、ここでタバコを吸ったらだめなのですか。それに、タバコは二十歳からってなんのことですか？」「知っているのに、知らないふりは止めなさい。路上喫煙も厳しく規制されている。早くタバコを消しなさい。最近はコンプライアンスがうるさいから、いつなんどきＳＮＳにアップされるかもわからないぞ」　少女は残念そうな様子で、火のついたタバコを見つめる。「もったいないなあ」「仕方がないから、オジさんが証拠を処分してあげよう。早くそのタバコを渡しなさい」　紳士は少女にタバコ代を渡した。１本なのに、少女には思いもつかないほどのお金だった。「とっても助かります。そういえば、未使用のタバコもありますけど」　少女は紳士にタバコを見せた。しかし、紳士は軽く首を横に振った。「それはいらない。火がついていないタバコは、自分で処分しなさい。今回は見逃すけど、売るなら間違いよ」「ありがとうございます」　少女は丁寧に頭を下げた。　去っていく紳士が、歩行者の目を気しながら、少女のタバコを上手そうに吹かすのが見えた。　風音が耳にまとわりつく。少女は凍える両耳に手を添える。鼓膜まで凍り付きそうだ。　それでも、少女は道行くひとたちに声をかけ続ける。この程度の稼ぎでは、家に帰る気にはなれない。　紳士から受け取ったタバコ代で、少女はまた新しい商売道具を仕入れた。今度こそ成功するはずだ。「火はいりませんか、どうか火が欲しい人はいませんか？」　今度はでっぷりとした紳士が近づいてきた。「お、いまどき珍しい物売りもいるものだ。それなら、ためしにひとつ火をいただこうかな」　少女は自信満々に、さっとライターを取り出した。紳士は残念そうに答える。「おや、ライター売りかい。ここは間違いだろう」「ライターではだめですか」「そりゃそうだ。雰囲気がでない。みんな期待しているのは、こんなカチッではなく、シュッのほうだからな」　紳士は火をする真似をした。「みんな間違いというのですか」　紳士は首をひねった。「まあそうだね。間っ違いいね」「間っ違いい？」「そう、まっちがいいね」「そういうことだったんだわ！　いままで風のせいで聞き間違えていたんだわ！」　少女は両手を打った。　こうして、令和のマッチ売りの少女が爆誕した。

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