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齊藤　想
2025/12/03 16:40
#第50回どうぞ落選供養とりあえずアップしておきます。ユーモアを目指しましたが、さすがに苦しかったかもしれません（汗）『まちがいだらけの少女』　年の瀬も押し迫った、大晦日の夜。　いまにも雪が降りだしそうな寒空の下で、靴も履かずにお客様を呼び込む少女の姿があった。　服はつぎはぎだらけ。防寒具は薄いカーディガンのみ。それでも、少女は体を震わせながら、忙しそうに道を行く大人たちに声をかけ続ける。「火はいりませんか？　どうか火が欲しい人はいませんか？」　少女の身なりに哀れをもよおしたのか、ひとりの紳士が立ち止まった。「ちょうどタバコが吸いたいと思っていたんだ。ひとつ火をもらおうか」　そのとき、ひときわ強い風が少女と紳士の間を通り抜けた。「えっ、いまなんとおっしゃいました？　風が強くて、よく聞こえなくて」　紳士は、もう一度、大きな声で言った。「火が欲しいと言ったんだ」「承知いたしました。さっそく、ご用意いたします」　少女がカゴから取り出したのは、火打石だった。少女が石を打ち付けて、カチカチと火花を散らす。生まれたばかりの火花は、寒風に吹かれて飛んでいく。「もうちょっとお待ちください。もうすぐ火ができあがりますので」　少女の様子に、紳士はあきれた。「おい、それじゃあダメだよ。間違いだね」「間違いですか」「原始人ではあるまいし、火打石でタバコを吸いたいというひとはいないよ。もっと手軽で、便利なものにしたほう売れるよ」「ダメでしたか」「そう、間違い」　少女はしょんぼりとした。　その様子を見て、紳士は火打石を少女から買い取った。つぎはぎだらけの服に同情したのもある。「これでパンでも買って帰りなさい」「はい」と少女は答えた。けど、この程度の稼ぎで帰るわけにはいかない。　紳士が見えなくなると、少女はもらった硬貨を握りしめて、新しい商売道具を仕入れるために小物屋に走った。　雪がちらつき始めた。それでも少女は声をからし続ける。世の中は金だ。お金を稼がないと生きていけない。　少女は穴の開いた手袋をこすり合わせながら、道行くひとに声をかける。今度こそ成功するはず。「火はいりませんか？　どうか火を欲しい人はいませんか？」　シルクハットの紳士が、少女の前で立ち止まる。「ちょうど火が切れていたんだ。ちょっと火をもらおうかな」「分かりました。いますぐ用意します」　少女はふところから、さっと火のついたタバコを取り出した。そして、思いっきり息を吸う。少女が咥えたタバコの先端が、赤く輝く。　少女は、キスをするかのように、口先を紳士に近づけた。「これなら手軽で便利でしょう。さあ、はやく火を付けてください」　紳士は驚いた。「ちょっと君、ここは路上喫煙禁止区域だ。そんなことをしたらダメじゃないか。それに君は二十歳以上には見えないぞ」「えっ、ここでタバコを吸ったらだめなのですか。それに、タバコは二十歳からってなんのことですか？」「知っているのに、知らないふりは止めなさい。路上喫煙も厳しく規制されている。早くタバコを消しなさい。最近はコンプライアンスがうるさいから、いつなんどきＳＮＳにアップされるかもわからないぞ」　少女は残念そうな様子で、火のついたタバコを見つめる。「もったいないなあ」「仕方がないから、オジさんが証拠を処分してあげよう。早くそのタバコを渡しなさい」　紳士は少女にタバコ代を渡した。１本なのに、少女には思いもつかないほどのお金だった。「とっても助かります。そういえば、未使用のタバコもありますけど」　少女は紳士にタバコを見せた。しかし、紳士は軽く首を横に振った。「それはいらない。火がついていないタバコは、自分で処分しなさい。今回は見逃すけど、売るなら間違いよ」「ありがとうございます」　少女は丁寧に頭を下げた。　去っていく紳士が、歩行者の目を気しながら、少女のタバコを上手そうに吹かすのが見えた。　風音が耳にまとわりつく。少女は凍える両耳に手を添える。鼓膜まで凍り付きそうだ。　それでも、少女は道行くひとたちに声をかけ続ける。この程度の稼ぎでは、家に帰る気にはなれない。　紳士から受け取ったタバコ代で、少女はまた新しい商売道具を仕入れた。今度こそ成功するはずだ。「火はいりませんか、どうか火が欲しい人はいませんか？」　今度はでっぷりとした紳士が近づいてきた。「お、いまどき珍しい物売りもいるものだ。それなら、ためしにひとつ火をいただこうかな」　少女は自信満々に、さっとライターを取り出した。紳士は残念そうに答える。「おや、ライター売りかい。ここは間違いだろう」「ライターではだめですか」「そりゃそうだ。雰囲気がでない。みんな期待しているのは、こんなカチッではなく、シュッのほうだからな」　紳士は火をする真似をした。「みんな間違いというのですか」　紳士は首をひねった。「まあそうだね。間っ違いいね」「間っ違いい？」「そう、まっちがいいね」「そういうことだったんだわ！　いままで風のせいで聞き間違えていたんだわ！」　少女は両手を打った。　こうして、令和のマッチ売りの少女が爆誕した。
陽心
2025/12/03 14:41
小どぞの今回の講評はちょっときつかったですね。あの日だったのかなあ。まちがいはあのとき生まれた、わたしはがまんできない🎶
ゆうぞう
2025/12/03 14:40
いちはじめさん重ねて「小どぞ」「まちがい」選外佳作おめでとうございます！「誰がために……」読みました。いやあ、面白かったです。 100年にわたる壮大な物語がわずか2000字の中に。ただストーリーが複雑すぎて複数回読みました。(笑)
蜂賀三月
2025/12/03 10:48
#週5公募チャレンジおはようございます！今日からどんどん冷えていくそうで、天気予報ではうちの近くにも雪マークがちらほら出てきています。皆様風邪にお気をつけくださいね。今日は川柳公募に挑戦しました！お口の悩み川柳　第3弾 https://koubo.jp/contest/276613 ぼーっと公募を見ていたらダジャレを思いついたので応募しました(笑) これとは別でSNSで繋がった歌人さんたちと短歌の企画をすることになり、そちらの短歌も少しずつ作成しないといけません。楽しみだけどある意味緊張～！いい作品を出せますように🐝
三山　敦
2025/12/03 00:13
執筆紀（かずんどさんの真似です）「まちがい」の反省を生かし？「罪A（仮）」にでてくる女性Aの設定を書き出してみると、下書き通りだと支離滅裂なキャラ設定になることに気づく。頭の中はいいとこどりしてたんだなあと再認識（もちろん頭だけで構築できる人もいますが）。少し現実路線に寄せた設定を書き、再度本文をいじる。確かに良くなった気がする。が今度はしっかり設定したせいなのか字数が伸び2300字でも足りなくなる。サブキャラ一人退場だろうか・・・。まだ時間はあるので無理に削らず今日はおわり。 noteの「桐島、部活止めるってよ」の考察も書きたいが時間が足りない。ひそかに「まちがい」のもりさつきさんや、増田肉うどんさんの作品を自分ならどう書くかとか考えてしまう。いやいやそっちは沼ですよと自分の中の何かがつぶやくが、ちょっと書いてみたい気もする。

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