塩や砂糖、味噌などの調味料は、溶ければ元に戻りません。発したら取り消せないという点では言葉も同じ。そこに注目した短歌です。言われてみれば当たり前ですが、ハッとさせられる気づきですね。 取り返しがつかないことを「放れば戻せぬ」と表現しているのも味わい深い部分です。調味料も言葉も慣れが生じると、放りだすように雑に扱ってしまうもの。「身に染みて」という結句も、味が染みていく料理を彷彿とさせます。 重層的で読みごたえのある一首でした。