あなたとよむ短歌 vol.39 テーマ詠「調味料」結果発表 ~破調をするかしないか~
テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「調味料」結果発表
~破調をするかしないか~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。
今回はテーマ詠「調味料」の結果発表です。
身近なものでありながら、意識しないと創作の題材にはなりにくい「調味料」ですが「うまく使えば味が出る」かもしれません。
毎回、最後にワンポイントアドバイスも載せていますので、ぜひ入賞作品とあわせてお読みください!
それでは、最優秀賞の発表です。
放れば戻せぬこと身に染みて
塩や砂糖、味噌などの調味料は、溶ければ元に戻りません。発したら取り消せないという点では言葉も同じ。そこに注目した短歌です。言われてみれば当たり前ですが、ハッとさせられる気づきですね。
重層的で読みごたえのある一首でした。
続いて、優秀賞2首です。
一旦は忘れて春の霊園を行く
味噌は残りの分量を意識しやすい調味料のひとつですよね。人は生きていれば物を食べますし、自分が生きていて料理をするからこそ味噌も減っていきます。
そんな忙しない日常を一旦は忘れて、向かった先は霊園。亡くなった大切な人のことだけを考えたいのかもしれません。 「春の霊園」という表現にはあたたかさ、明るさがあります。別れのつらさはすでに乗り越えたのでしょう。生きている自分と、亡くなった人と、日々を大切にすごす様子が伝わってきます。
別の女と囲む食卓
ドキッとする一首。「何にでも七味をかけてたあの人」は、辛ければ何でもいいや、という雑なタイプなのかもしれません。そんな「あの人」は、今ごろ自分ではない「別の女」と食卓を囲んでいるんだろうなあ、と思いをめぐらせる内容です。
別の女のところにいる「あの人」は料理の味もわからない雑なヤツだ、と見切りをつけている風でもありますが、「あの人」が七味をかける癖を私は知っているんだぞ、という優越感も感じられます。どろどろとした絶妙な機微を描いています。
それでは、佳作のご紹介です!
最後に、こちらの作品を読んでみましょう。
「きみだけのCook Doでいたい」という表現がギラギラと光っていて、どうしてもご紹介したくなった一首でした。味の素の「Cook Do」は、指定の食材があれば、他の調味料は一切入れずに一品料理がつくれる、つまり「Cook Doさえあれば大丈夫」な調味料です。
何の素材でもマッチする「万能調味料にはなりたくない」と言い、「きみだけの」ために存在する自分でいたい。きみを輝かせる存在でいたい、という熱烈な思いが伝わってきます。
あまりに勢いがよくて、このままでもいい気もします。
ただ、かなり大胆な破調(57577の定型リズムから外れていること)であるのも事実です。せっかくなので、少し定型に寄せてみる推敲をしてみましょう。いかがでしょうか? 一首の短歌としての読みやすさはUPしたように感じます。
取り乱した雰囲気にしたい、勢いを出したいなど、理由があって破調にチャレンジするのはもちろん面白い試みですが、基本的には短歌の定型を意識して、それを楽しむ作歌をすると、より読みやすく言葉が伝わりやすい短歌になる場合が多いです。
破調は計画的に。
作品のご投稿ありがとうございました。引き続き、テーマ詠「おもちゃ」を募集しています。
テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。
どこかに応募した作品も、未発表も作品もぜひご投稿ください。(著作権がご自身にある作品に限ります)
応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「おもちゃ」。 応募点数制限なし。 |
応募方法 | 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌おもちゃ」をつけてツイートしてください。 ※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。 |
賞 | 最優秀賞1点=Amazonギフト券3000円分 優秀賞2点=Amazonギフト券1000円分 佳作数点=ウェブ掲載 ※該当作品なしの場合があります。 ※作品を記事内で推敲する場合があります。 ※発送は発表月末を予定しております。 |
締切 | 2023年6月30日 |
発表 | 2023年8月1日 |