歌え!
「こんな作品、恥ずかしくてどこにも投稿できない!」
と、思って手元に眠らせているものはありませんか。
私は様々なコンテストの入選作を見れば見るほど、自分の作品がちっぽけに見え、投稿するのやめようかな……と思うことがあります。
ですが、まずは外に向けて行動しなければ何も始まりません。
というのも、何も表現できずに終わり、悔やんだ経験があるからです。
学生の頃、バンドを組んだことがあったのですが、ある日先輩たちが遊び半分で、私の大好きな曲を演奏し始めたことがありました。
そして、ボーカルでもない私に「歌え!」と叫んでくれたのです。
ベテラン先輩たちのドラムや弦の音が鳴り響く中、歌詞もすべて覚えているその歌を、当時の私はどうしても歌いだすことができなかった。
恥ずかしさが邪魔をして勇気を出せぬまま、ただ聴いていた。
あの歌のない演奏の最初から最後まで、今でも耳に残っているのです。
10年以上たちましたが、あれから生バンドで歌う機会など一度も訪れません。
あれは、人や環境に恵まれたからこそ得た、その時限りのチャンスだったのです。
あの時、照れくさくても、格好がつかなくても、思い切り息を吸ってマイクを手に楽しめばよかった。
今でもたまに、そう思います。
あの時の「歌えばよかった」という気持ちを、もう二度と味わいたくない。
だから、この連載も毎回「えいっ!」と開き直って、公開しています。
何かを表現するチャンスが巡ってきたときには、あの「歌え!」という言葉を言い聞かせ、なんとか自分の背中を押すのです。
音楽と同じで公募も、どんなに不格好でも「とにかくやる!」をモットーにしています。
そうすると日々、進んだり後ずさったりを繰り返しながら、いつの間にかじりじりと進んでいるような気がするのです。
公募の世界はいつでも私たちに、様々なジャンルのマイクを向けてくれています。
川柳や俳句、エッセイやイラストなど、誰にでも自分に合ったステージがきっと見つかるはずです。
いくら音痴でも、とにかく私はマイクを握っている最中。
さあ、皆さんもご一緒にいかがですか。