あなたとよむ短歌 vol.12「テーマ詠」は能動的に
「テーマ詠」は能動的に
花粉が飛ぶ季節になりましたね。私はばっちり花粉症です。皆さんはいかがでしょうか?
歌人・花山周子さんの短歌には、スギや花粉に関するものがあります。
春風に杉の樹冠は揉み合える戦にも似る交合のさま
(花山周子「林立」本阿弥書店)
もうもうとしたスギ花粉の様子が目に浮かぶようです。短歌の題材は美しいものだけに限りません。
それでは今回も、投稿していただいた作品を一緒に読んで・詠んでいきましょう。
雑誌「ダ・ヴィンチ」の人気投稿コーナー「短歌ください」は、「自由詠」と「テーマ詠」を同時に募集しています。
「テーマ詠」は指定されている言葉そのものを短歌に入れなくてもOKな場合がほとんどです。
似たようなものに「題詠」があります。こちらは、指定の語を入れる場合が多いようです。
いずれも必ず募集要項を確認しましょう!
砂崎さんの短歌は、テーマ「トランプ」という語を入れずに、トランプについて詠んだ作品です。
トランプには政治や戦争を思わせるゲームが多くあります。キングやクイーンを擁するトランプ自体が、王国を模したものです。
小学校か学習塾か。子どもの無邪気さと、王国の盛衰の対比が非常に面白い一首です。
「興って亡ぶ」の音の軽快さ・内容の重さも、一首のなかの対比を強化しています。インパクトがある作品です。
一方、もし「トランプ」というテーマを全く知らずに砂崎さんの一首を読んだら、どうでしょうか。
急に意味が通りづらくなってしまいます。少なくとも「トランプ」をイメージすることは難しく、もしかしたら「いじめ」や「スクールカースト」を詠んだ作品のように読解できるかもしれません。
たとえば、大喜利や「サラリーマン川柳」のように「テーマや題を生かした小粋な返し」を評価する公募もあります。
一方、テーマ詠は、テーマを前提に短歌を読んでもらうのではなく、短歌によってテーマを捉え直す気持ちで作歌するのがオススメです。
ですので、
など、単純に「答え」を言ってしまっては、捉え直したことにならず、面白くありません。
砂崎さんもそれを分かっていて、今回はトランプという言葉を入れなかったのだと思います。
たとえば、こんな方法はいかがでしょうか。
カードを場に捨てるのは、トランプゲームでよくある動作です。また、歴史上さまざまな王が処刑されたように、王国が滅べば王も捨てられます。その2つの意味をかけて結句にしました。
(「興って亡ぶ」に合わせて「捨」ではなく「棄」にしたことで、より残忍な雰囲気がでそうです)
また、もう少し情景を具体的にしてもいい気がします。
いかがでしょうか。テーマ詠は、そのテーマに頼りすぎず、能動的な姿勢で望みたいものです。
引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!
応募規定 | ペンネームと、入選を逃した公募タイトル・応募した作品・お題やテーマ(ある場合のみ)をお送りください。 |
応募方法 | 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌」をつけてツイートしてください。 |
賞 | 採用1点=公募ガイドONLINE上で講評・アドバイス、金券2000円分進呈 |
締切 | 常時募集 |