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文章表現トレーニングジム 佳作「奇妙な音」ひよこ

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作文・エッセイ
結果発表
文章表現ジム
第22回 文章表現トレーニングジム 佳作「奇妙な音」ひよこ

ある朝、お寺の鐘のような音が響いて目が覚めた。ゴォーンゴォーンと確かに下から聞こえてくる。寝床のすぐ真下は駐車場だったから、奇妙だと思った。そのうち、ある法則に気づいた。

大学を卒業してすぐ映画会社に就職をした。入社すると超雑用が待っていた。当時、ジャパニーズホラー(日本の恐怖映画)が流行っていたので我が社でも幾つかホラー映画を製作していた。そのフィルムを予告編作成のためレコーディングスタジオに素手で持ち運びをするのが、入社してすぐの私の役目だった。

法則とは、前日にスタジオへフィルムを届けた次の朝方に決まって鐘の音が鳴る。

恐怖映画を担当していたプロデューサーに呼ばれた。

「最近、何か変わったことはない?」

そう言って仏像の描かれたお札を渡された。

「いやね、映画の監督が奇病に取り憑かれて、見えないものが見えたり、奇妙な音を耳にしたり」

「奇妙な音?」

その瞬間、鐘の音が頭に響いた。

「映画に少しでも関わりのある人に災いが起こらないといいけど」

そう言い残して彼ははどこか暗い顔をして去った。

入社時、定年間近の音響担当の人が言っていた。映画の撮影時にお祓いは大事だよ。お岩なんて、お化け映画を撮る場合なんかはね。ずっとずっと変えてはいけない映画業界の古いしきたりのようなものだからと。その言葉にお札を持つ私の手が微かに震え出した。