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文章表現トレーニングジム 佳作「生活綴り方」大河増駆

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作文・エッセイ
結果発表
文章表現ジム
第22回 文章表現トレーニングジム 佳作「生活綴り方」大河増駆

中学校のある日の国語の時間のことだった。国語科の先生が出張に行って生活綴方というものを知られたそうで、自分の生活を丁寧に書くことが良い文章になっていくとおっしゃった。人に褒められた良いことではなくて、自分がつらかったこととか、いいにくいけど本当は知ってほしいことを正直に書くことが大事なのだという。私は祖母と母親の仲が悪くつらい思いをしていることを書いた。

一週間後の国語の時間に生活綴り方の発表会が行われた。

クラスにAくんといういつも汚い身なりをした男の子がいた。クラスのみんなはAくんのことを馬鹿にしていた。そのAくんの発表の番になった。

Aくんの作文には幼いころ母親が病気で亡くなったことや、町工場に勤める父親と幼い妹弟との生活ぶりが書かれていた。Aくんは妹弟の面倒をみるだけでなく。遅くまで家事をやり、朝は早く起きて新聞配達をしていたのだ。冬には朝起きるのがつらいときもあるが、妹弟や亡くなった母のことを考えると目が覚めるというのだ。

クラスのみんなは肩を揺すりながら泣いていた。今まで私たちはAくんになんてつらい思いをさせてきたのであろう……、そんなことを振り返らせる文章であった。

私はAくんの作文を、痛みをともなって思い出すのだが、同時に温かいものがわきあがってくるのである。