文章表現トレーニングジム 佳作「平成の猫探し」にこ
第21回 文章表現トレーニングジム 佳作「平成の猫探し」にこ
私が生まれた昭和の終わりごろ、猫はそこら中にいて、かまっているうちになんとなく居ついた猫を飼うのが主流であった。しかし今は平成も終わりに近づき、近所の野良猫の数は激減している。
去年、猫を飼おうと思い、インターネットで検索をした。捨て猫を保護している人が譲渡先を探すサイトがある。そこには多数の猫の写真と譲渡の条件が載せてある。しかしそれがみな厳しい。一読して驚嘆した。年齢や家族形態への注文の他、猫を一人にしないように家族のタイムスケジュールを教えて欲しいだの、家の間取り図や写真、収入や貯金の額を明かせ、確認の為に抜き打ちで自宅訪問するから部屋にあげろなどとあり、ここまでくると強盗の下調べとしか思えない。何しろインターネット上のやり取りしかないので、声も顔もわからぬ匿名の相手である。
かぐや姫のような無理難題を吹っ掛ける猫の写真を見れば目の潰れた汚れ猫、説明文に「病気があります、一生介護してください」とあったりして、猫の病気は保険がきかないため、生涯通院ともなれば場合によっては数百万かかることもある。その面倒をタダでみてもらうのに、これだけ上から条件を出すとはやはり新手の詐欺か何かであろうか?
結局、縁があり他の猫を飼うことができたが、条件をすり合わせるのにへとへとになった。昭和に比べて平成の猫は幸せになったのだろうか。少なくとも、猫と暮らしたい人間にとっては厳しい時代になった。