文章表現トレーニングジム 佳作「恋する中学生男子」かけうどん
第17回 文章表現トレーニングジム 佳作「恋する中学生男子」かけうどん
分け目から跳ねた数本の髪の毛、それが朝陽を浴び金色に輝き綺麗だった。左隣りの彼女は眩しそうに目を細め、大きく手を振りながら、スカートの下にジャージを履いた足で軽やかに歩く。ふと白いスタンスミスの靴紐がほどけて、彼女は立ち止まり、屈んで紐を結ぶ。僕と彼女の間に数メートル距離が空く。結び終えた彼女は、たたたっ、駆け足で距離を縮め、僕の横にまた並ぶ。彼女に軽口を叩く。
「そんなんじゃない。もう、いい」
彼女は機嫌を損ね、殆ど走り出しそうな勢いで僕から離れて先へ行ってしまう。照れ隠しだろう。本当は嬉しいくせに、本心を見破られて恥ずかしがっているに違いない。女子は難しい。一緒に学校行くの恥ずかしいって言う癖に、自分から隣りに並んできてるじゃん。嫌よ嫌よも好きのうち、とはこの事だ。
スポーツ刈りに眼鏡のまるでモテない中学生男子だった僕は、すらっと背が高く、ショートカットが似合う、白い肌の同級生に淡い恋心を抱き、家を出る時間、歩く速度を微調整し、いつもの角から大体同じ時間に現れる彼女を、偶然を装って待ち伏せしていた。学校では二人は付き合っていると噂され、僕は有頂天だった。
別々の高校に進学し、それきり会っていない。ただ電車で偶然彼女に会った、という友人から聞かされた。彼女は毎朝つきまとう僕のことを疎ましく思い、陰でストーカーと呼んでいた。
勘違い嫌よ嫌よはガチで嫌。川柳コンテストに応募したら入選した。