第13回 文章表現トレーニングジム 佳作「モテたい」 ひよこ

どうしたら国語の成績が上がりますか？　という生徒や保護者からの質問に今まで数多く答えてきた。塾講師に成り立ての頃は漢字の覚え方、記述のコツや読解方法を丁寧に指導していた。しかし、国語は結果が思っているほどに出ない教科だ。先生たちの間では、「この教科ってセンスものだから」「家庭で読書環境があるかどうかだよね」などと囁かれる。

ある日、教室に入ると小学五年生の男女が口喧嘩をしていた。成績上位者の女子が自分よりも下位の男子を馬鹿にし始めた。言い合いは加速して、その男子の妹まで侮蔑されたとき、ついに口下手な彼が言い切った。

自分は何を言われてもいいが、家族のことを悪く言われたら許しはしないぞ！　教室中がシーンと静まり返った。

その決めゼリフを口にして以来、周りの女子からカッコイイと徐々に言われ始めた。本人も異性に注目されることを意識したのか、苦手な国語の授業を急に前向きに受けるように変わった。頑張るオーラが放たれるたびに、国語の成績が少しづつ伸びた。教え子を褒める。褒められるから勉強する、またやる気が出る。正のスパイラルがずっと続いて、一年後、中堅レベルではあるが第一志望の中学校を見事に射止めた。

今では冒頭の質問に私は自信を持って答える。モテたい要素も関係するようです。分かってくれる人にはスッと納得してもらえる。