文章表現トレーニングジム 佳作「初恋」 かわうそ
第13回 文章表現トレーニングジム 佳作「初恋」 かわうそ
「男子はぞう。女子はのっぺらぼう。」
小学校2年生のころ、女子の下半身の構造を知っているつもりだった。
二つ年上の姉の遊びによくつき合わされていたので、タカラトミー社の人形「リカちゃん」の衣装をはがし、裸を見る、という機会に恵まれていたのだ。
それは、なめらかで凸凹がなく、無機質な丘のように見えた。
僕はものしりなのが自慢だったから、もちろん誰にも言わなかったが、それを知っていることについても、得意に思っていた。
当時プールの着替えは男女一緒だった。プールの時間の前になると、そのまま教室で服を脱ぎはじめる。
男子よりも女子の方が、目覚めるのが早い。女子はほとんどタオルにくるまって着替えた。男子はあまり気にせず、自然な動作で堂々と下半身を露呈する。
僕はといえば、タオルで隠すことはなかったが、恥ずかしさはすでにあった。自分のことを、それを、見ている者がいないか、脱ぐタイミングを狙って、険しい目で周囲を伺っていた。
そんな中、女子にもかかわらず、堂々とさらけだしているHさんに気づいた。
授業中、先生に質問されても答えることができないHさん。「ちょっと馬鹿だな」と思っていた女の子の、それに、一瞬で目が釘づけになった。
「割れてる!」
おかしい。違う。
落雷のような衝撃が脳天に走った。それから、Hさんのことが好きになった。卒業するまで、ずっと好きだった。
きっかけを語るに恥ずかしい初恋の思い出。