文章表現トレーニングジム 佳作「フォークダンス」 久野しづ
第13回 文章表現トレーニングジム 佳作「フォークダンス」 久野しづ
小学四年の時、運動会の種目にフォークダンスがあった。内側に女子が、外側に男子が円になり向かい合って踊り、ワンフレーズ曲が終わると、女子が一人ずつずれていくのだ。
当時、私はクラスの女子の中で一番背が高かった。そして、私のクラスは男子より女子の方が二人多かった。そのため、私は男子側にまわされてしまった。
「〇〇ちゃんとなら、手をつないでもいいから、安心だわ」
ほとんどの女子が私と踊る番にまわってくると、そう言った。私は笑顔を作っていたが、心の中では深く傷ついていた。
男子となんて手をつなぎたくない。それは異性として意識するからだろう。
――あなたたちは恵まれているのよ。私なんかそう思うことさえ、できないのだから。
悲しいかな、私は唯一手をつないでみたかったK君とも踊れなかった。K君もまた、男子の中で一番背が高かった。ゆえに、K君が私の横で他の女子たちと手をつないで踊るのをうらめしげにみることに。
近くにいるのに触れられない。そんなもどかしさを感じたものだった。他の女子たちにK君を奪われているような気さえした。
ただ、そのフォークダンスの間だけ、K君のそばにいられることだけが、私にとってなぐさめだった。