文章表現トレーニングジム 佳作「中学三年、秋」 ヨシダケイ
第13回 文章表現トレーニングジム 佳作「中学三年、秋」 ヨシダケイ
中学三年の時である。当時私は中高一貫の男子校に通っていたが、女子がいないため、友人達との会話の七割が下ネタという毎日を過ごしていた。
ある時、私は剣道部の部室で大量のビデオテープを発見した。「まさか、呪いのビデオ?」と恐れおののいたが、調べてみると、それらは卒業した先輩が置き土産に残していったアダルトビデオであった。
先輩に「好きにしていいぞ」と言われた私は喜びを分かち合うため、この大いなる遺産を友人達にばらまいた。友人達は狂喜し、キューバを解放したゲバラのごとく感謝された私は、この英雄的行為に酔いしれた。
が、1週間後、大事件が起こる。テープを貸した友人I君のビデオデッキが、テープを入れたまま壊れてしまったというのだ。しかも、再生は出来るのに取り出せないというピンチ。
I君の母親は気付かずそのまま修理に出したとの事だが、電器屋さんが再生する可能性は否めない。電器屋から親に伝わり、それが保護者会の議題にでも上がろうものなら・・・。
I君と私は、緊急会議をマクドナルドで開き、「電器屋に忍び込みデッキを取り戻すか」「潔くエロを親にバレるか」を2時間程、真剣に話し合った。会議の結果、「バレたら謝ろう」という結論に至った。幸い、電器屋さんは中身を再生する事なくI君の親に修理完了をつたえたのであった。
不法侵入とエロを見る事、どちらの罪が重いかを知らなかった中学3年生の秋の出来事であった。