ガラスの時間 地村洋平個展、六本木で物質の美を探る


「始まりの実験」最新作で時間と物質を表現
KOTARO NUKAGA(六本木)では、2026年6月6日(土)から7月18日(土)まで、地村洋平による個展「それはまた、次の名前の前にいる」を開催する。本展では、ガラスの内部に錫を封じ込めた造形作品によるシリーズ「始まりの実験」の最新作に加え、ギャラリーの空間全体を透明なビニールで覆い尽くす大規模インスタレーションが発表される。
「始まりの実験」シリーズは、透明なガラスの内部に錫を封じ込めた地村洋平の代表的な作品群である。膨張係数の異なるガラスと錫は本来であれば冷却時に内部応力を生じ、破壊に至る。地村はその限界を探り、溶融状態のガラスと錫が出会う一瞬を捉える。透明なガラスの中に散らばる銀色の錫の粒は、重力・遠心力・表面張力が綱引きをした痕跡そのもの。一点ごとに、制作中に働いた力と時間のすべてが記録されている。
人間を超える時間が凝縮されたガラス作品
ガラスの主成分であるケイ素も、内部に封じ込められる錫も、かつて恒星の核で生まれた元素である。星の死とともに宇宙空間に放たれ、数十億年を経て、いまこの工房で再び出会っている。地村作品には、人間の一生では到底捉えられない時間が凝縮されている。「ガラス」と名付けるのも、つくるのも、見るのも人間の側の営みだが、その手前と先には、人間の認識だけでは完結しない物質固有の時間が広がっている。本展はそのずれを味わう体験を観る者に差し出す。
ビニール膜で再構成された展示空間
本展では、ギャラリーの建築骨格そのものを透明なビニール膜が覆い尽くし、空間全体が「もうひとつの皮膚」を纏ったかのような佇まいへと変貌する。熱を加えれば形を変えるという点で、ビニールもまたガラスと同じ素材的特性を持つ存在である。地村はこの素材にも炉の前と同じ態度で向き合い、与えた熱に素材が応じた形をそのまま受け入れる。膜の内側に分け入った鑑賞者を迎えるのは、これまでのオブジェ作品も含めて点在する造形群。何かが「展示されている」というより、もともとそこにあった何かに立ち会うかのような感覚で、作品と空間と鑑賞者の境界がほどけていく。
開催情報
会期は2026年6月6日(土)から7月18日(土)まで。開廊時間は11:30~18:00(火~土)で、日月祝は休廊。オープニングレセプションは6月6日(土)16:00~18:00に開催され、作家本人が在廊する。会場はKOTARO NUKAGA(東京都港区六本木6丁目6-9 ピラミデビル 2F)。
地村洋平の実践とキャリア
地村洋平は1984年千葉県生まれ。富山ガラス造形研究所を経て東京藝術大学大学院博士後期課程を修了し、伝統的な金属鋳造とガラス造形の双方を学んできた。金沢21世紀美術館、富山市ガラス美術館などで作品を発表し、2025年より東京藝術大学美術学部ガラス造形研究室准教授に就任。工芸的な技術の精緻さを基盤としながらも素材の物質性そのものと向き合う実践は、本展においてひとつの結節点を迎える。工芸の枠組みにとらわれない表現への取り組みが、KOTARO NUKAGAでの初の個展で示される。
出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000071.000071871.html