せきしろの自由律俳句　第69回「勝負」結果発表

2022/12/15

タグ: 川柳・俳句・短歌・詩; 投稿する; せきしろ自由律

【自由律俳句とは】

自由律俳句は定型にこだわらず（定型ではなく）、しかし、リズムはある俳句。

情景を切り取り、その中に心情を込めてください。

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結果発表

第69回課題：勝負

せきしろの一句

年越しまで起きていると言い張ってた子ら

最優秀賞

ボウリングストライク！いっぽん跳びはねる

（東京都　トモト　11歳）

生き生きとしていて、動きがあって、勢いがあって、音も聞こえてきそうな句。私は俳句で感嘆符をほぼ使わないが、この感嘆符は純真さを感じさせてくれ、なんだかボウリングのピンにも見えてくる。

優秀賞

隣のレジへは移らない

（長崎県　毎日ハッピー　45歳）

レジでの勝負は私も好きで、最も早そうなレジを予測して並び他のお客さんに対して勝手に勝負を仕掛ける。自分の選択を信じることができるのか、それともできないのか、これもまた勝負。動かないことをメインにしているのが良い。

誰もいない

（千葉県　千葉信子　91歳）

この年齢にならないと作れない句である。たとえば私がこれを作ったとしても、それは空想に過ぎない。俳句は空想で作ってはいけない。これぞリアルだ。短律ならではの鋭さと余韻がいつまでも残り続ける。

佳作

プールのあとの国語
（東京都　塩崎悠太　13歳）

勝負服から香る防虫剤
（愛媛県　咲　16歳）

お気に入りのピアスを着けて向かった先に
（大阪府　メスシリンダー　20歳）

友人だけが自分に賭ける
（大阪府　反時計　23歳）

空見ずに干す
（大阪府　フルカワ　31歳）

笑い転げて勝負にならない
（千葉県　xissa　57歳）

勝った方が何だったっけ
（鳥取県　きゅうりのたこよ　32歳）

前の人よりきれいに署名する
（岩手県　屋根裏のトコノマ　27歳）

レッドを掲げた審判が秒で囲まれる
（北海道　エリンギ　35歳）

花札を畳に叩きつける祖父の勢いよく
（大阪府　石川聡　41歳）

下道にしよう
（東京都　ラムキシ58　59歳）

このスイカ間違いなく甘いよ
（北海道　シシャモ　71歳）

砂を投げるという攻撃
（京都府　よしのき　27歳）

ハンデが効き始めた
（大阪府　ろっさん　42歳）

パスワード入力あと１回
（大阪府　石川かるた 48歳）

ズルをする顔をしている
（東京都　トントン　48歳）

正の字を力強く足して
（群馬県　伊藤どらやき　48歳）

ジンクスだとしてもすごい格好
（東京都　ビールおかわり　50歳）

相手も食べていようがトンカツ
（奈良県　きょん　58歳）

サヨナラホームランの歓声を背中に受ける
（東京都　もちぞう　50歳）

今月の総評

『プールのあとの国語』。眠気との勝負を詠んだ句だ。『勝負服から香る防虫剤』。その服が久々であることと、大切にしていることがわかる。『お気に入りのピアスを着けて向かった先に』。まるで映画のタイトルのようで、続きが気になる予告編を見た気持ちになる。『友人だけが自分に賭ける』。ありがたさとプレッシャー。どちらが強いのか。『空見ずに干す』。洗濯に関する句はいくつかあったが、この句はリズムと端的さが良かった。『笑い転げて勝負にならない』。ほのぼのだ。『勝った方が何だったっけ』。これもまたほのぼのだ。『前の人よりきれいに署名する』。自分の中だけの謎の勝負。私も多々ある。『レッドを掲げた審判が秒で囲まれる』。あのスピード感を見事に表現してくれた。『花札を畳に叩きつける祖父の勢いよく』。私の家もそうだった。やけに威勢の良い音を思い出す。『下道にしよう』。勝負に出た！『このスイカ間違いなく甘いよ』。店員との勝負か、はたまた自分との勝負か。

プロフィール

せきしろ

1970年北海道生まれ。俳人、コラムニスト。芥川賞作家でお笑いタレントの又吉直樹との共著『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』『蕎麦湯が来ない』のほか、『たとえる技術』などの著書がある。

イラスト：飯田研人／撮影：賀地マコト

募集要項

自由律俳句は、定型（五七五）ではない俳句です。定型ではありませんが、どこかリズム（律）のある句を募集します。句読点は使わず、俳句らしい味わいを意識して、心にしみるような情景、共感できるような情景を切り取ってください。俳句のもとは俳諧ですから、滑稽味があってかまいません。しかし、笑いだけではなく、しみじみ、ペーソス、人間くさいといった句を期待しています。

応募規定

定型（五七五）でない自由律の俳句。

面白コピーの募集ではなく、定型ではない無季俳句。

応募上のご注意

・ペンネームを使わない方は、応募フォームのペンネームの欄に本名をお書きください。

・応募フォームの「生年月日」の欄は必ずお書きください。

・応募点数に制限はありませんが、1応募につき1作品とします。

応募規定