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【結果発表】書き出しSF小説賞 「AIと猫」

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作文・エッセイ
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結果発表
書き出しSF

「AIと猫」をテーマに、130字でSF小説の書き出し部分だけを募集しました。
今後の展開が気になるような、凝った設定の作品が数多く集まりましたが、その中でも特に引き込まれた書き出し小説を発表します。みなさま、たくさんのご応募ありがとうございました!

募集内容

「AIと猫」をテーマにした
書き出しSF小説

最優秀賞

『コレハナニ』とAIが示した画像を見て、私は思わず頬を緩めた。それは可愛らしい仔猫の写真だったから。「猫っていうのよ」と教えると、『ドコニイルノ』と聞いてきた。……どうなんだろう。私がこの核シェルターに住み始めてもう千年。探しに行こっか、と私は思わず呟いていた。

(埼玉県 きさらぎみやび 40歳)

【講 評】
AIの何気ない問いをきっかけに、閉鎖された核シェルターから未知の世界へ旅立とうとするスケール感に引き込まれました。「私」が何者なのか明記されてはいませんが、2022年の人間とは明らかに寿命が異なるようです。はたして、舞台は発展した世界なのか、それとも退廃した世界なのか。
「私」とAI、そして読者の旅が始まることを予感させます。

  

優秀賞

「おはようママ、おなか空いた」。私の声は静かな空間にニャーンと響く。ご飯の準備に取り掛かるママを追いかけ、黒く変色したそのすねに首を擦り寄せる。ママ、そろそろ交換時期かな。猫の寿命が永遠になり、人間を含む他の生物が滅びてから、一体どれ程の年月が経ったろうか。

(神奈川県 あおりんご 48歳)

【講 評】
飼い主のママにすがりつく無邪気な猫かと思いきや、猫が人間を管理している側だったのが衝撃です。
どうやら猫だけの社会が完成しているようですが、今もなお人間という存在に愛着を持っている点がディストピア的で、風刺が効いています。

  

猫にはAIを持つアンドロイドと人間の区別がはっきりとついている――という内容の論文が公に発表されたのは、もう一ヶ月も前の事になる。

(群馬県 笹椰かな 36歳)

【講 評】
すでに人間界にアンドロイドが普及した世界なのでしょうか。論文発表から一か月経過した今、世界で何が起きているのかを想像するとわくわくしてきます。
猫のミステリアスなイメージをうまくいかし、60字程度でしっかりと世界観を描き出している一文です。

  

そうして人類は永遠の眠りについた。ただ1匹の猫と、スリープ状態のアンドロイドを遺して。 時間という概念が希薄であるアンドロイドはいつ目覚めるかわからない。それでも猫は待ち続けた。かつての飼い主に代わり頭を撫でてくれるのは、もうこのアンドロイドしかいないのだ。

(愛知県 雪也凪 36歳)

【講 評】
人間に忘れられ、世界にとり残された小さな命の願いはシンプルなもの。いつかアンドロイドが目覚めた時、猫の期待に応え、温度のない手で機械的に背中を撫でるのでしょう。
人類、アンドロイド、猫でそれぞれ時間の尺度が異なるのもおもしろいですね。

  

「ソノシジニハ シタガエマセン 」少し前まで流暢な日本語を話していた白猫は、まるで旧式のPCのようなコンピュータヴォイスでそう言った。「チッ」と小さく舌打ちした、おそらくは世界で初めて生きた猫に人工知能を埋め込んだ男は【牧瀬動物病院】と印字されたペンを投げた。

(広島県 三詞 49歳)

【講 評】
倫理観が狂ってしまった男の目的とは? とある動物病院から始まった出来事に、今後なにが起こるのかわからない不穏さがただよっています。好奇心から実験が始まったのかもしれませんし、世界を変えようとするほどの強い意志があるのかもしれません。

  

佳作

組織は僕を殺して、研究中の最先端技術を奪うつもりだ。 奴らの手に渡れば、犯罪に使われるだろう。 僕はAIを搭載した猫のアンドロイドを作った。 この猫には僕の記憶をコピーしてある。 「……あとは頼んだぞ」 猫を窓から外へ逃がすと、扉をノックする音が部屋に響いた。

(和歌山県 たーくん。 35歳)

雨が降りしきる日のこと。普段から喧嘩が絶えないクラスの男子が、小さな猫をずっと抱えていた。彼の優しい眼差しに気づいた猫は、大きな欠伸をした。途端猫の体が青く光りぼうっと浮かび上がった。都市伝説で聞いたことがある。この辺りで猫型AIロボットが研究所から逃げ出したと。

(埼玉県 ヰ端夕 31歳)

骨を折るが心も折れる、絶望一色の世界。 「猫の手も借りたいと言ったのだが、まさか本当に猫を寄越すとは……」 太陽の光を浴び、青緑色の虹彩を帯びるAI搭載の捜索機体が瓦礫の山を軽やかに動く。 その様は猫そのもので、絶望色の世界に微かな笑みを生じているのも、また事実。

(滋賀県 大西洋子 49歳)

僕は1年後死ぬらしい。難しい病気なんだって。覚悟はできているけど、一つだけ気にかかることがある。愛猫のことだ。僕の死後、こいつの面倒をみてくれる人は? そんな悩みをSNSに呟いた翌日、1件のDMが届いた。「あなたの猫ちゃんのためにあなたのAIを造りませんか?」

(高知県 杉野こだち 48歳)

猫は嫌いだ。やつらは本能で私が生物として大したことないと見抜くのだ。近所の虎猫は明らかに私を格下と見て私の前をわざとゆっくり横切る。テレビに猫が映ると速攻チャンネルを変える。そんな私が変わったのはある日突然AI猫のモニターに選ばれたからだ。猫の名はホームズ。

(千葉県 いんげん 57歳)

「お前、AIロボットのくせに頭悪いな」
同級生の人間が放ったその一言が、何度も回路を往復していた。
堪らず足元の小石を蹴り飛ばす。すると小石は勢いあまって、毛づくろい中の猫のお尻に当たった。
猫は僕の方を向いて、確かにこう呟いた。
「痛ってぇなぁ」

(神奈川県 まぐもにく 22歳)

22世紀初頭の地球では、ネコロナ病で絶滅の危機に瀕していた猫に変わりAI猫が普及していた。その様な中、日本のある村で発見されたネコロナ病に強い猫を使った増殖計画が始まろうとしていた。一方で、その事に危機感を抱いたAI猫連盟が計画を阻止すべく動き出した。

(熊本県 まちゃん 64歳)

いい子にしてンだぞ、と父の顔が画面一杯になる。見守りAI猫を父に贈ってから半年。僕は仕事の合間には必ず猫の目を通して父を見ていた。障子の奥に父の影が消えた。すかさず猫をマニュアル操作に切り替える。「どこにいるんだ」。暗い廊下を音もなくAI猫が走り出す。

(長野県 松崎晃 33歳)


総評

今回は、130字のショートショートではなく、物語の「書き出し」として未来を予感させるものを選出しました。
SF(=サイエンス・フィクション)の定義は幅広いため、若干心配ではありましたが、かなり質の高いSFの書き出し小説が集まり、完全に杞憂でした。どれも130字以内にぎゅっと設定が盛り込まれ、続きが読みたい気持ちをかきたてられるものばかり。濃い世界観に一瞬で没入しました。



応募要項

募集内容
SF小説の最初の書き出しを募集。
テーマは「AIと猫」。
「実はすべての猫はAIだった」、
「世界を揺るがす極秘実験のカギはAIロボットと猫」
など、テーマから自由に発想してください。

応募方法
WEB、Twitterから応募。
【WEB】
応募フォームからご応募ください。
【Twitter】
公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローし、ハッシュタグ「#書き出しSF小説賞」をつけて、作品のみツイートしてください。

応募規定
・1応募につき1点。応募点数制限なし。
・作品は未発表のオリジナル作品とし、採用作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
・応募者に弊社から公募に関する情報をお知らせする場合があります。
・Twitterからの応募は、採用の際にダイレクトメッセージでお名前やご住所等を確認させていただきます。数日経ってもご返信がない場合は、採用辞退とさせていただきます。


最優秀賞1点=QUOカード1000円分
優秀賞4点=QUOカード500円分
佳作数点=WEB掲載

公募ポイント
mottomo会員の方は、応募するだけで自動的にポイントがたまります。

【応募者全員】5p追加
【最優秀賞】さらに30p追加
【優秀賞】さらに10p追加
※ポイントの付与は各回ひとり一回までです。月末に反映されます

締切
5/8(日) 募集は締め切りました

発表
5/16(月)公募ガイドONLINE上にて発表

お問い合わせ先
不明点は、公募ガイド編集部「書き出しSF小説賞」担当まで・・・・ こちらからお問い合わせください。