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つくログ

蜂賀三月
2025/11/09 16:23
#週5公募チャレンジお疲れ様です！朝から雨が降っていて頭がおも～いですが、家の掃除をしていました。明日締切の仕事があるので、夜も頑張らねば。今日は珍しくキャッチフレーズの公募に挑戦です🐝 横断歩道予告標示「ダイヤマーク」キャッチフレーズ募集 https://koubo.jp/contest/276125 賞金は10万円！　締切は来月末なのでまだまだ余裕がありますね。ぼーっと主催者ページを見ていたらひらめいたので、さっさと送っちゃいましたが(笑)ときどきそういうこともあります。そういえば、昨日こんなニュースを見かけました。 AI作句の見分け困難　妖怪川柳コン今年で終了 https://news.yahoo.co.jp/pickup/6558254 AIの是非は置いといて、長く続いた川柳のコンテストが終わるのは寂しいですね…。今年はまだ応募できるので、どこかのタイミングで応募したいと思います。
三山　敦
2025/11/09 13:38
私も何か晒しとかないとフェアじゃないと思うので、ノベルアップ＋にて公開しているものを置いてみました。「カップ麺出来たよ」など決まった文言から話を開始しなければならないコンテストに投稿・公開しているものです（ここは公開後も改稿できるシステムです）。あらためて見ると、ラノベ感がありますが、本人はいたって普通の小説のつもり書いたのでその点は汲んでやってください。4000字ちょっとあります。でも、うん、あらためて見るとラノベですね・・・。「カップ麺を食べる前に」「カップ麺出来たよ。」教室の隅で亮介がおいしそうにカップ麺を食べる。いい匂いだ。私もカップ麺が食べたい。しかし親からはカップ麺は食べるなと言われている。「一条さんは食べないの？ほらもう一つ買っておいたんだけど。」「佐々木君、ちょっと用事思い出しちゃった。」「え、そうなの、じゃあロッカーに入れておくね。」用事なんてない。このままだとカップ麺を食べてしまう。頭がカップ麺でいっぱいになりながら自転車をこいで帰宅した。「姫子、おかえり。今日のおやつは堅焼きそばよ。」「いらない。」私はおなかがすいていたが、カップ麺が食べたかったのだろう。今でもこの時堅焼きそばを食べなかった記憶だけがある。それからしばらくして、佐々木君が転校することになった。私はロッカーにいくつか溜まったカップ麺を取り出し、二人で食べようと切り出した。「え、いいの？いつも一条さん、食べずにとっていたみたいだけど・・・。」「今日はいいの。」カップ麺に湯を注ぐ。いい匂いが教室に漂う。ふたを開けて割りばしで初めて食べた。「おいしい！」「でしょ。まあ最初はそうかもね。」ちょっとだけ亮介が鼻にかけて話したが、姫子は気にせずカップ麺をすすった。「あ、でもこれは秘密にしておいてね。色々めんどくさいから・・・。」「え、そうなの？うん。分かった。」佐々木君は転校した。私はロッカーに残ったカップ麺をこっそりリュックに入れて持ち帰った。「あなた、どうするの？このままじゃ不渡りが出てしまうわ。」「わかってるよ！わかってるけどどうしようもないんだ！」姫子はリビングで両親が言い争っているのが聞こえた。詳しくはわからなかったが、ドラマでよく見る会社が倒産する時のあれだと感じた。父は代々続く会社を経営していたが、折からの不況で資金のやりくりに四苦八苦していたのは薄々感じていた。「逃げるぞ。」「え？」「明日には債権回収者が乗り込んでくる。今晩中に逃げるしかない。」両親はありったけの通帳と持てるだけの衣服を車に詰め込んでいた。パジャマ姿の姫子は荷物を詰め込む両親の前を遮った。「どういうこと？説明してよ。」「姫子、ここにはもう居られない。」「え、勝手すぎない？私は嫌。なんで私まで逃げ回らなきゃいけないの？」「言いたいことはよくわかる。でも理想論じゃどうしようもないんだ。」私は納得できなかった。こんなことならもっと亮介とカップ麺を食べておけばよかった。「あなた、どこかあてはあるの？」「島根に親戚が居る。そこならまずは大丈夫だろう。」両親と私は車に乗り込んだ。高速に入ってしばらくしたところで、車が横転しそこからの記憶はなかった。後で分かったことだが、飲酒運転のトラックの強引な追い越しに巻き込まれたとのことだった。「・・・一条姫子さん？あ、目が覚めましたか。」私はベッドの上で、包帯でぐるぐる巻きにされて身動きがとれなくなっていた。全身打撲の状態だったが、後部座席にいた私は、めいいっぱい詰め込んでいた衣服がクッションになって、助かったらしい。首を回そうとしたがこちらも無理だった。「お父さん、お母さんは？」目の前にいた女性の警察官は、ためらいながらも首を横に振った。私は涙もふけない状態で泣いた。数か月後退院した時、私の所持品はめいいっぱいの衣服と、両親が残した通帳と、そしてあのカップ麺だった。弁護士に相談し、身元の安全の確保と財産放棄を行った。最後にちらっと自宅を見に帰ったが窓ガラスは割られ、家の中の物は散乱し、あれだけきれいだった庭の芝生はぐちゃぐちゃに荒らされていた。「つらいでしょうが、気を落とさずに。」　私は島根の親戚の家に身を寄せた。そこではなるべく目立たないように行動し、成績はしっかりキープして、大学に進学した。島根の親戚に迷惑をかけるのも心苦しかったので、それを機に下宿した。「カップ麺くう？」バイト先の白井さんは、まかないよりもカップ麺派で、休憩になると姫子にカップ麺を薦めてきた。「私はいいです。」「あ、そ。一条さんてカップ麺だけは食べないよね。そういう教えかなんかなの？」「あの普段三食、必要な量のものは食べていますので。」　無下に対応するのはよくないと考え、丁寧に返したつもりだった。「かああ、出た。たかびーじゃないんだけど、微妙にハイソな雰囲気たまに出すよね～。」私は気分を害してしまったと、焦った。居場所がなくなるのは非常に困る。「ごめんなさい。そんなつもりで言ったわけでは。」「ああ、大丈夫気にしてないから。まあそういう人たちもたくさん見て来たから。でも一条さん、俺の勝手な推測だけど高貴な身分から凋落した人？」私は言い当てられたことよりも、凋落という古風な言葉に笑いそうになった。「あ、ツボった？」「え、いやそんなことは。」「笑っちゃいなよ。ていうか一条さんが笑ったの初めて見た気がする。」初めて？そういえば私は亮介とカップ麺を食べた日以来、笑っていなかったことに気が付いた。下宿先に戻り、久しぶりにあのリュックを開けた。中にはあの時のカップ麺が五個入っていた。事故の時もつぶれずにそのままの形を保っていた。　それからの私の人生は、良くも悪くも平凡だった。まるであの事故が無かったかのように時は過ぎていった。大学ではそれなりに友達もできて、合コンにもいった。でも彼氏をつくることもなく、大学四年となり、そろそろ社会人に踏み出す雰囲気が周りにも出てきていた。私は小さな出版社に内定が決まり、バイトはその日が最終日だった。白井さんは相変わらずカップ麺を食べていた。「おお、内定おめでと。うちも悪くはないと思うんだけどね～外食はまあ、きついか。」「すみません。」「あやまんなくていいよ。うちに来たバイトの子大抵いいとこ勤めちゃうんだ。きっと俺の教育がいいんだろうね。」白井さんは冗談半分でそんなこと言いながら、パソコンを叩き、カップ麺を食べながら、経費の月末処理を行っていた。「今生の別れになると思うけど。」私は「今生」という古風な言い回しに、笑いそうになった。「あ、やっぱり。一条さんはこういう言い回しに弱いんだな。あの凋落の時と同じ感じだ。」「よく覚えていますね。」「覚えているも何も、一条さんが笑ったの見たの、これでやっと二回目だもんね。」そんなに長い間、私は笑っていなかったのか。大学の友人はどう思っていたのだろう。「最後にさ、もしよかったらその笑えなくなった理由教えてくれない？ああ、もちろん無理にとは言わないけど。」私は気が付いたら、白井さんにカップ麺と亮介の事、夜逃げの事、両親が居ない事などこれまでのことをつらつらと話していた。白井さんはうなずくこともなく、黙って聞いていた。「そっか、そんなことがあったんだね。それは笑えなくなるわ。」「すみません。暗い話で。」「謝らなくていいよ。聞いたのはこっちだし。それに、まあそういういろんな過去背負った子はたくさん見てきたから、一条さんもそうなのかなって思ってたんだ。」「あ、気づいていたんですね。」「人間観察が俺の仕事の要だからね。バイトはなんだかんだってそういうもんだから。ごめんね詮索しちゃって。」白井さんは頭を下げながら、引き出しを開け一枚の写真を見せてくれた。「確証が持てなかったから、伏せてたけど、たぶんこれその亮介君じゃないかって思うんだ。」　白井さんが見せてくれた写真には確かに亮介が映っていた。写真の日付はあのカップ麺を食べた数か月後の日付だ。それは白井さんと亮介と数名が、部室でカップ麺を食べている光景だった。「え、知り合いだったんですね。」「知り合いも何も、同じサッカー部の先輩後輩だったからね。」　私は白井さんに、亮介の今の住所を聞いた。それはバイト先から電車で数回乗り継いだ先にある住宅街だった。その家を訪ねてみると、人が住んでいる気配はなかった。念のため呼び鈴を鳴らしてみたが、やはり反応はなかった。もう引っ越してしまったのかもしれない。その場を立ち去ろうとすると、付近を歩いていた五十代くらいの女性に話しかけられた。「え、あの家に用事？」「ええ、昔の友人が住んでいると聞いたので。」「そうなの、あそこはご主人が飲酒運転で捕まって、一家がバラバラになっちゃったんだよね。」「え、それっていつごろのことですか？」「あれは五年くらい前じゃない？高速で派手にやっていたからおぼえてるわ。」私は無意識のうちに思い出したくもない記憶をたどった。犯人などどうでもよかったから、というかむしろ氏名など知りたくないくらいの気持ちだったから、ほとんど記憶にないが、ちらっと見えてしまった新聞の記事には確か「佐々木」の文字があった気がした。「白井さん、事故の犯人の事、知っていたんですね。」「ごめん、一応良識の範囲内でネットでその人のことを調べるのは、仕事からしょうがないっていうか。」「最低。」「ほんとごめん。でも君をそういう風に見たことは一度もないことだけは、誓えるよ。」　私は自分を丸裸にされたかのようで、目の前の男に嫌悪感しかなかった。早々にバイト先を去り、下宿先に戻ろうとした時、息を切らして追いかけて来た。「もう、何も話すことはないです。」「一点だけ、最後に佐々木家の名誉のために伝えておきたくて。さっきやっと調べが付いたんだ。」　白井は姫子に一枚の用紙を手渡した。それは心臓移植の承諾書のコピーであり、そこには佐々木亮介から一条姫子への移植についての記載があった。「さすがに個人情報の保護の壁が厚くて、入手は簡単ではなかったんだけと、何とか間に合ったって感じ。」　佐々木亮介は、高校生の時に心臓のドナー登録をしていたという。そしてあの事故の際トラックの助手席にいた佐々木亮介も脳死状態となっていた。医師は登録に従い、最善の処置として姫子のボロボロになった心臓を亮介の心臓と交換したという事だった。　「一条、この原稿挙げといてくれる？」「はい、わかりました。」私は月末発行の月刊誌の記事をデータに取り込んだ。これで一通り入稿完了だ。「おつかれ、おそくなったし。これでも食ってけよ。」編集長から、カップ麺を手渡された。「ああそれなら、常備しているんで。」私はリュックからカップ麺を取り出し、胸に手を当てた。「え、何その高校球児がやっているみたいなやつ？なんか宣誓でもやんの？」「ああこれ、カップ麺を食べる前の儀式なんです。気にしなくていいですよ。」「へえ、まあこの編集部は変わったやつしかいないから、そういう多様性もありだね。」私はお湯を注ぎ、割りばしを割り、ふたを開けた。「亮介君、カップ麺出来たよ。」
三山　敦
2025/11/09 12:58
私も「練習」の落選供養？をしたいところなのですが、改稿もできないひどい内容だったので（出してしばらくして気が付きました）、バラバラにしてネタ帳に入れました。ただネタとしてもイマイチかも・・・。「ゲーム」の方1つ下書きが完成。2000字ちょっとで展開は悪くないと思うのですが、3000字は欲しい内容。2000字だと均等に内容がばらけてしまっているので思い切って設定を一個飛ばすくらいしないといけないかもと思っています。
かずんど
2025/11/09 11:22
『W版小説でもどうぞ〈勘違い〉』投稿日記８日（土）先週、２枚半くらい書いていたものが、なんとも平凡なので、ひと展開ひねっていったん仕上げる。読み直すと、オチが〈勘違い〉に着地してない弱さが気になり、なんとか〈勘違い〉にこじつけたオチに変更。でも弱いから、タイトルだけどんどん書いていってイメージを刺激するやり方で、もう１作考える。なんとなく全体の構成が頭にできたが、三世代家族の話だったので、祖父母夫婦の年齢と結婚と、子どもが生まれた年とかをExcelで設定を始めたら、めんどくさくなって孫の設定まで行かず中断。夜は録画してあるドラマとか映画。ドラマは前クールの『しあわせな結婚』を1本、NHKBSの『ダークサイドミステリー〈多重人格者ビリー・ミリガン〉』（本、持ってる！）とか見て、23時くらいから映画『悪魔と夜ふかし』を見た。（いつもの週末）９日（日）日付またいで『悪魔と夜ふかし』見終わって（面白かった！）、HDDレコーダーの録画整理（ダビングとか）をしていたら夜中の3時に。それから昨日ほぼ仕上げた1作目の推敲したら朝６時に。昨日昼寝したけど、さすがに眠かったので布団に入るが、なんだか寒くてねむれず30分くらいで起きる。アイデアの一部しかなかった別の作品（ある男の話）のイメージが膨らんできたので、机に座って書き始めたら、１時間40分でいっきにラストまで書けた。三世代家族の話は書かずにボツ。それから、ある男の話の推敲をして、10：29に2作投稿。上出来。自分では、一気に書いたある男の話のほうが気に入っているが、なんせ徹夜のノリなので……(^-^;
齊藤　想
2025/11/08 23:43
とりあえず晒しておきます。実際にそばを打つと、めちゃめちゃ難しいです。 #第49回どうぞ落選供養『やぶ吉とＺ』　君島喜代吉は、戦前から続く老舗蕎麦屋「やぶ吉」の三代目だった。八十歳を超えても厨房に立ちづつけている。蕎麦打ちは祖父と父に子供のころから仕込まれた。伝統の味こそやぶ吉の自慢だった。　そのやぶ吉に、本田が弟子入りしたのは１０年前だった。　蕎麦職人への道のりは「そば打ち３年、こね８年」と言われている。喜代吉は本田に祖父や父と同じように指導するが、本田はいまだに満足のいくそばを打つことができない。　喜代吉が打つ蕎麦との違いは、ひとくちすすれば明らかだ。歯ごたえはボソボソとしていて、のどごしも舌触りも悪い。蕎麦の香りも広がらない。　老舗とはいえ、経営は厳しい。外食産業は多様化し、全国チェーンのファストフード店が大繁盛している。　麺類業界に限ってもラーメン店が圧倒的な人気を誇っており、やぶ吉は来客数、売上高ともに先細りが続いている。　喜代吉は、自分の代で店を畳むつもりだった。いまの経営状況では継がせられない。修行もさせられない。　ひとり息子が手伝いを申したときは嬉しかった。だが、断腸の思いで拒絶し、都内の大企業に就職させた。　そこに飛び込んできたのが、本田だった。やぶ吉の味に感動したという。　よくある話だ。　喜代吉は年齢のこともあり、手伝いが欲しかったのも事実なので、本田を受け入れた。　本田は不器用な若者だった。何をやらせても下手だった。　蕎麦打ちの修行には「そば打ち３年、こね８年」以外にも「包丁３日、のし３ヶ月、木鉢３年」という言葉もある。　本田に包丁を使わせると、蕎麦の幅が揃うまで３日どころか半年かかった。のしにしても、生地が平らになるまで３年だ。木鉢に至っては、いまだに天候に合わせた水加減の調整ができない。　本田の蕎麦は、やぶ吉の味と明らかに異なる。やぶ吉の蕎麦は繊細で、貴婦人のようなのど越しが自慢だが、本田の蕎麦は武骨で野武士をかみ砕くかのようだ。　それでも、本田は諦めずに黙々と修行を続けた。練習量はトップクラス。しかし、不思議なことに、本田は練習すればするほどやぶ吉の味から離れていく。　常連客は喜代吉に声をかける。「あの若者、頑張っているね。どうだい、彼が後をついでくれそうかね」「どうだろうねえ。熱意は立派だが」　喜代吉は曖昧に言葉を濁した。　喜代吉も肉体的にムリができない年齢になっている。本田がこねた蕎麦を、喜代吉が仕上げる体制でなんとか続けてきた。天ぷらも仕込み業者に任せることが多くなった。　本田がこねているので、やぶ吉の味が変わり始めた。常連客が首をひねる回数が増える。味だけでなく、客の顔ぶれまで変わりつつある。　喜代吉は悟った。誤魔化すのは限界だ。決断を下すときがきたのだ。　閉店後に、喜代吉は本田を厨房の奥に呼び出した。　本田は厨房の奥で、かしこまった表情で立っている。喜代吉は厳しく、通告した。「お前にはこの店を継がせん。のれん分けも許さん。わしは自分の代で、この店を整理する」　喜代吉の回答を予想していたのか、本田はうな垂れている。そして、絞り出すような声を出す。「す、すみませんでした。せっかくの味を残すことができずに……」「バカ野郎。下を向くんじゃねえ。やぶ吉の味がなんだっていうだ」　本田は顔を上げた。師匠の言葉の意味を計りかねているようだ。「味なんて、時代とともに変わるものだ。本田は新しい屋号で開店しろ。やぶ吉の味ではなく、本田の味で勝負しろ」　喜代吉は客席に目線を向けた。「お客様の顔ぶれを思い出せ。ほんの少しだが、本田のそばを食べにくる若者がいるじゃねえか。そいつらのために、蕎麦を打て」　本田の顔が、ぱっと、華やいだ。「おれも屋号を変えて、もうちょっと頑張るつもりだ。今度は自分自身のために」　本田がいなくなった後も「やぶ吉」は「やぶ吉Ｚ」に名称を変更し、営業を続けた。ただ、開店日は週５日から週３日に減り、夜の営業も取りやめた。　久しぶりに店に来た常連客が、喜代吉に声をかける。「あの若者はどうした。後を継がせるつもりじゃなかったのか」「思うところがあり、独立させました。わしの味を継ぐ才能がない弟子は、早めに見切りをつける。これも師匠の務めです」「厳しいものだねえ」　喜代吉は、注文を受けたざるそば用の蕎麦を冷水で洗い流した。水を切られて盛りつけられた蕎麦は、まるで宝石のように輝いている。　ざるに、真珠のような薬味が添えられる。「お、オヤジさんも腕が上がったな。屋号にＺがついたし、心境の変化でもあったのかい」　常連客が軽口をたたくと、喜代吉が答えた。「この年齢になっても、改めて自分の味を極めたくなったのです。弟子は師匠のコピーではない。あの若者は、そう気づかせてくれました」　常連客は箸を鳴らした。「つまり、喜代吉さんも先代や先々代のコピーではないオリジナルを目指すのか。おれも通い続けるから、死ぬまで蕎麦屋を続けてくれよ」「蕎麦を打てる限りは頑張ります」　喜代吉は皺らだけの顔で、微笑んだ。

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