リレー小説 課題1「補習組」第3話
それ、私が太っているってこと?
佐々木くんは答えず、中に入ってしまった。慌ててあとを追いかけた。
中では縄跳びの音が響いている。
「おっ、佐々木、どうした? 彼女か?」
引き締まった上半身をさらした男性が声をかけてきた。
「そんなんじゃないです。同級生」
佐々木くんはあっさり否定した。
「見学?」
男性が私に聞いた。
「いえ、連れられてきただけで」
「せっかくだからやってみたら。女性に人気なんだよ、ボクササイズ」
男性によると、佐々木くんはここの練習生だそうだ。顔が腫れあがっていたのはケンカしていたからではなく、ボクシングをしていたからだとわかり、ちょっと見直した。
佐々木くんが背中を押すように言う。
「そう、やってみなよ。服、貸してあげるよ。その恰好じゃ無理でしょ」
張り切ってかわいいブラウスにショートパンツを着てきたのに。
「俺のだけど、洗ってあるから大丈夫」
そう言って、佐々木くんはTシャツを投げてきた。思わず、受け止めた。
「ほら、ここが更衣室」
有無を言わさない態度に、思わず着替えてしまった。
更衣室から出ると、佐々木くんは目を丸くした。
「鈴木さん、まさか、Tシャツだけ?」
サイズが大きすぎて、ショートパンツがすっかり隠れてしまっていた。
「ま、まさか、ほら」
Tシャツをめくってショートパンツを見せると、佐々木くんは慌てて目をそらせた。
ボクササイズを終え、佐々木くんとジムを出た。そこにルナが走ってきた。
「かよ、大変。さっきそこでかよのママと会っちゃって」
第3話 原作者
(兵庫県 田辺ふみ 54歳 会社員)