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「公園に行ってくる」

ヤマトはお母さんにそう伝えると、サッカーボールを持って玄関に向かった。

「お友達からクッキーもらったのよ、食べていったら?」

「あとでいいよ」

ヤマトは外へ出た。

「あれ? 道路がない……入口?」

いつもと違う目の前の風景にヤマトはおどろいた。公園へと続く道がなかった。かわりにそこには、自分の背たけよりも高い木々やツタにおおわれた二つの入口があった。

「この先に一体何があるんだろう」

ヤマトはワクワクして、持っていたボールを二つの入口の真ん中にポーンと投げた。

ボールはコロコロと左側の道の入口にころがった。

「よーし、左の道を行こう」

ヤマトはボールをけりながら左の入口に入っていった。

道は右へ右へと曲がっている。

「右へ曲がります、右へ曲がりまーす」

入り口がみえなくなったころ、ボールが何かにガツンとぶつかった。道をふさぐ柵があった。

「えーっ? 行き止まり?」

突然、ジリリリとベルが鳴った。

「まもなく電車が発車いたします。おのりの方はお急ぎください」

ふと見ると、一両の電車が出発するところだった。ヤマトはボールを手にとり、電車にとびのった。電車はゆっくりと動きだした。

「どっかで見たような電車だな……なんかほこりだらけだ」

電車は汚れていて、ほこりだらけだった。

「右へ曲がります、まもなく終点です」

道なりに右へと曲がって進んだ電車は、あっというまに駅に着いた。

「またここから先に行けるんだな」

ヤマトは電車を降りると、再びボールをけって右へ右へと先に進んだ。

駅がみえなくなると、またボールが何かにぶつかった。今度はガシャンガシャンと大きな音がした。

「わあっロボットだ! 右うでも左うでも落ちちゃった! はでにぶつけちゃったよ」

ボールに追いつくと、両うでが落ちた大きなロボットがとなりの道との間にどーんと立っていた。右うでは目の前に、左うではとなりの道に落ちている。

ヤマトはハッと気がついた。

「おととい、ボールぶつけてこわしちゃったオモチャのロボットと同じだ」

そういうと、ヤマトは目の前の右うでを拾い、ガシャンと右肩に戻した。そして左うでも拾おうととなりの道に手をのばした。

「うわっ、届かない! 間の木がじゃまで全然届かないよ」

「どうしよう」

ヤマトは考えながら後ろへ下がった。足がコツンとボールにぶつかり、ボールがコロコロと先にころがり出した。

「下り坂になってる! ロボットごめん!」

ヤマトはボールを追いかけた。

「あら、ヤマトくん、サッカーがんばってるんだって? お母さんがほめてたわよー」

突然の声にふりむくと、ティータイムを楽しむ二体のクマのぬいぐるみがいた。

「君たちはいつもリビングに飾られてる……」

「そうよ、今日もお母さんがきれいにしてくれたわ」

「あ、お友達からクッキーもらったんだって、ヤマトくんも食べる?」

「え? いや、あとで」

「そーお? じゃあ、サッカーがんばってね」

ヤマトは二体に手をふるとボールを追いかけた。追いついた場所には柱があった。

「オ・リ・カ・エ・シ? 折り返し地点?」

どうやらここが今の道の終わりで、折り返してとなりの道に進むようになっている。ヤマトはボールをけりながらとなりの道に進んだ。今度は左へ左へと道が曲がっている。

「あら、ヤマトくん、サッカーがんばってるんだって?」

「あっ! さっきの」

「クッキー食べる?」

「あとで!」

ヤマトはすばやくそこを通りすぎた。道は左へ曲がりつづけている。ガシャンと音がした。ロボットの左うでがそこにあった。

「そうか、ボクはさっき右うでの道を通ってきて、折り返して今度は左うでの道に入って戻ってきたんだ! 良かったー」

ヤマトはロボットの左うでも肩に戻した。そして先へ進み、再び電車にのって降りた。

「やった! 出口だ!」

ヤマトは出口を出て、うしろをふり返った。そこには二つの入口があった。

「ただいま」

ヤマトは自分の部屋にかけ込んで、オモチャ箱からロボットと電車をとり出し、接着剤と布を用意した。

「ごめんね、また一緒に遊ぼう」

ヤマトは、ピカピカになった電車と修理したロボットをそっと机の上に置いた。