キンキラふいっしゅ
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キンキラ
ふいっしゅ
うえだあきこ
ボクは、じみでふつうのさかな。
友だちも、家ぞくもいない。
だから、自由で気まま。
この広い海の、どこへでも行ける。
ここでは、きれいなさかなたちがオシャレをしてパーティーをしているよ。
だけど、ボクみたいなじみなさかなは、だれもきょうみがないようだ。
ボクが通っても、みんな知らんかお。
いつものことさ。気にしない。
どんどん泳いでいくと、海の色がにごってきた。
「あんまりよく見えないなぁ」
と、ボクのすぐ横をへんてこなさかなが通りすぎた。
「びっくりした! ペットボトルのかたちをしてる!!」
こんどはラッパのかたちのさかなが、プーップーッと音をならしながら泳いでいる。
どうやら、ここはふしぎなさかながたくさんいる海らしい。
むこうではフライパンのかたちのさかながあちこちぶつかりながら、カンコンと音をたてていて、まるでえんそう会だ。
そのうえ、とび出そうな大きな目をぐるんぐるんまわしながら、ボクにぶつかってきた。
「ボクのこと見えないの?」
きいてみても知らんかお。
いつものことさ。でも、ちょっぴり気になる。
にごった海の中で、へんなさかなたちをポカンとしながらながめていると、上からキラキラしたコインがユラユラと落ちてきた。
ゴクン!!
「あっ、のんじゃった」
はき出そうとしても、もうおなかの中。
するとボクのからだの、一まい一まいのうろこが金色に光りだした。
「ボクのからだ、どうなっちゃったの?」
それからまた、ボクはおどろいた。
いろいろなゴミが、うようよしている。
これじゃ、まちがってのみこんでしまう。
「こんなところで、みんなへい気なの? ここから出なきゃダメだよ。もっといいところがあるよ」
どんどん大きな声になり、ついにはさけんでいた。
だけど、みんな知らんかお。
いつものことさ。いや、こんどはちがう。
ボタンの目をしたさかなが、ボクに近づいてきた。
「ボタンが目にはりついてしまったよ。でも、小さなあなからキミがちょっと見えるし、声もきこえる。ずっとここにいるさかなは、目も耳もきこえないみたいだけどね。キミ、ボクたちをどこかにつれていってくれないかい?」
そういって、ボタンの目を大きく広げた。
ボクに話しかけてくれたさかなは、はじめてだ。なんとかしてあげたい気もちになった。
でも、どうしたらいいだろう。
そのとき、ボクはとあみにひっかかった。
「ひらめいたぞ。キミとボクとで、このとあみを口にくわえて中にみんなをあつめるんだ。そのとあみをくわえたままひっぱって、みんなをあんぜんなところへつれていけばいい」
さっそくボクたちは、とあみをギュッと口にくわえてみんなをあつめて泳いだ。
はじめはみんなあばれて大へんだったけれど、そのうち流れのまま泳いでくれたのでラクになった。
しばらく行くと、きれいな海にたどりついた。まだ、だれもすんでいない。きれいなさんごしょうがユラユラゆれて、かんげいしてくれているみたいだ。
「ここなら、あんしんだ」
ボタンの目をしたさかなが「ありがとう」といった。ほかのさかなたちも、よろこんでいるようだ。
「キミも、ここでくらさないかい?」
そうきかれたボクは、かおを横にふった。
「キミにあえたことはうれしいよ。でも、いろいろなところへ行ってドキドキワクワクしたいんだ。ボクは行くよ。じゃあね」
そういって泳ぎだすと、ボクのうしろにキラキラした水のつぶがあつまって、海の中がまるで天の川ようにきれいにかがやいた。
「いつだって、ここでまってるよ」
そんな声が小さくきこえた。
いつものことさ。気にしない……。