文章表現トレーニングジム 佳作「一歩進んだ彼と私」ロビンの恋人
第16回 文章表現トレーニングジム 佳作「一歩進んだ彼と私」ロビンの恋人
「うちもそろそろパソコン買わないとね」
「はい?」主人の発言に対する私の返事にはかなりの怒気が込められていて、敵(主人)もすぐにその提案を引っ込めた。
私が過剰に反応する理由は、彼の機械音痴に長年泣かされてきたからだ。
テレビの録画、DVDの再生はもちろん、洗濯機、炊飯器すら扱えない。生活していく上で電化製品は、なくてはならないものだ。それを買うのも、小さい物によっては設置するのもすべて私の仕事。故障した際には、「お~い、これ動かないぞ」と一言。彼の頭の中には、電池切れじゃないかとか、取扱説明書を見ようなどという発想はひとかけらもない。
友人のご主人が、洗濯機が壊れた時、部品を取り寄せて修理したと聞き、驚きと共に羨ましすぎて「旦那を交換して欲しい……」などと不届きな考えが頭に浮かんだ。
何年経っても、携帯の操作すら覚えようとしない。使える機能は通話のみ。世の中便利になってきているというのに、文明にどんどん取り残される彼を哀れにも感じる。
そんな主人にとって、パソコンなどタイムマシンに近い代物だろう。例え所有したとしても扱えるはずもない。
しかし、諸事情があって我が家にタイムマシンがやってきた。面倒な接続や設定を行ったのはもちろん私。彼は、上機嫌で動画などを見ている。少しだけ文明人に近づいたか。
彼と機械。不釣り合いで思わず吹き出した。