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佳作「『エッヘン』のおばちゃん 安部直」

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作文・エッセイ
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文章表現ジム
第6回 文章表現トレーニングジム 佳作「「エッヘン」のおばちゃん 安部直」

「エッヘン」は、故郷にある駄菓子屋。本当の店名は誰も知らない。主のおばちゃんが叱る時の口癖から、そう呼ばれている。

山形に帰省した時は、かならず顔をだす。今は、店の一角が高齢者の溜まり場。同級生のMちゃんが二代目おばちゃんになって、口癖まで相続している。行けば、昔の悪ガキたちがニコニコ顔で迎えてくれる。彼らは、駄菓子でお茶を飲みながら、世間話を楽しんでいる。話の中身は、自分の病気と亡くなった人の噂が中心。あとはお金の話。「オレに投資すれば、かならず儲かる」そういう輩は、Mちゃんから「エッヘン」といわれ、出入り禁止になる。

子供の頃も似たようなことがあった。人気の力道山メンコを弱い子供から、巻き上げた奴がいた。その子に、おばちゃんは怖い雷を落として震え上がらせた。

今の子供も学校帰りにランドセルを置くと、目を輝かせ欲しい商品を探し出す。のしイカやうまか棒は、きれいなケースに入っている。まるで、美味しい玉手箱。昔、夢中になった野球、相撲のメンコはなく、ビー玉や独楽は隅の方で小さく固まっている。今は人気漫画のキャラクター商品が駄菓子屋の主役の座。相も変らぬ、商品を奪い合う子供の喧嘩は元気な証。

駄菓子屋は、昔も今もウキウキ、ワクワクする野外教室。でも、おばちゃん先生の「エッヘン」だけは、クワバラ、クワバラ。