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メセナアワードで「工房からの風」「シェル美術賞」などが受賞

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公益社団法人 企業メセナ協議会
 

公益社団法人企業メセナ協議会は、「メセナアワード2016」の受賞活動7件(「メセナ大賞」1件、「優秀賞」5件、「特別賞:文化庁長官賞」1件)を決定しました。

 

この賞は、企業による芸術・文化を通じた社会創造の観点で特に優れた活動を顕彰するものです。今年は企業によるコンテストや公募などの活動を中心に、若手アーティストへの支援・贈賞、子どもたちの創造力を育むコンクール、豊かな児童文化の醸成など、日本の多様な文化の担い手を励ましてきた企業メセナに賞が贈られました。

 

 

メセナ大賞

日本毛織株式会社「工房からの風」

活動内容

千葉県市川市、本八幡駅から線路沿いに10分ほど歩くと、ショッピングセンター「ニッケコルトンプラザ」が見えてくる。運営する日本毛織株式会社は、1896年より毛織物を手がける中、繊維にとどまらず多角的に事業を拡大し、1988年、工場跡地に同施設をオープンした。約50,000坪の敷地には「ニッケ鎮守の杜」と呼ばれる一角があり、工場時代から残されるお社を中心に豊かな自然がひろがる。野外クラフト展「工房からの風」は、この地をステージに、2001年に始まった。

 

毎年、10月に行われる同展に出品したい工芸作家を公募する。対象は、陶磁器・木工・金工・染織など自然の恵みを素材に手仕事で作品を制作する、プロまたは明確にプロを目指す新人作家。「ニッケ鎮守の杜」内の「galleryらふと」スタッフは約50名を選び、春から伴走者となって展示の準備を進める。この間、値付けから展示方法など作家として必要なスキルを伝授するほか、作家同士の交流を図り、切磋琢磨によるクリエイションの向上にも寄与する。

 

イベント2日間で来場する約20,000名のうち、7割が地元の住人でファンも多い。「使う」工芸の作家にとって、使い手との交流は制作のインスピレーションを得る大切な機会だ。またギャラリストやバイヤーからの声掛けで、この日にデビューのきっかけをつかむ作家も少なくない。本番までの半年にわたる準備期間は、作家にとってより確かな成長への足がかりとなるのだ。

 

作り手と使い手をつなぎ、豊かな暮らしづくりを提案する。工芸によるアクションは、生活の中にやわらかな風を吹き込んでいる。

 

評価ポイント

日常に結びついた工芸に着目し、豊かな生活文化の醸成に寄与している。

新人作家の登竜門として機能するだけでなく、充実した支援により育成にも貢献している。

 

工房からの風 工房からの風・craft in action

 

 

優秀賞:縁の下発掘賞

株式会社CBCテレビ「CBCクラブ文化賞(くちなし章)」

活動内容

日本で最初の民間放送局である中部日本放送、略称CBCは、1950年に名古屋市で創立した。「文化の発展と向上に寄与することが放送の使命である」との基本姿勢に則り、草分け的存在として事業を展開、その一つに「CBCクラブ」がある。東海3県で活躍する文化人による組織で、1957年に会員145名で発足した。同社が事務局となり、会員相互の親睦や地域文化の向上・発展を目的とした活動をバックアップする。会員の出品による「チャリティ美術工芸展」や「こども絵画展」の開催、ラジオ「文化・楽楽」の制作や機関誌の発行など活動は多岐にわたり、1960年には「CBCクラブ文化賞(くちなし章)」を創設した。

 

同賞は、東海地方で一芸一能に黙々と従事し、貴重な業績と成果をあげながら、人に知られず自らも何も言わない隠れた存在の方々を顕彰する。そんな“縁の下の力持ち”を植物のくちなしと重ねたことが、「くちなし章」と呼ばれる所以だ。

 

毎年、事務局から会員に向け推薦者を募集し、候補者の中からクラブを代表する委員が1名を選出する。受賞者にはくちなしを図案化した七宝焼きの徽章と賞金を贈るほか、クラブの名誉会員として登録する。近年は、「源氏物語絵巻」などの復元模写に携わった古典模写制作者や、舞台・美術作品の魅力を写真で伝えてきたカメラマンにこの賞が贈られており、その数は94名にのぼる。

 

東海地方の“くちなし”を探し続ける同社とクラブの二人三脚は60年に差しかかろうとしている。地道な活動は、芸術・文化を支える技術と才能を、これからも未来へとつないでいくだろう。

 

評価ポイント

独自性のある取り組みで、芸術・文化を下支えする多様な人材を顕在化している。

継続的な支援により、東海地方における文化の継承に貢献している。

 

CBC公式ホームページ CBCテレビ[JOGX-DTV] - CBCラジオ[AM-1053kHz-FM-93.7MHz]

 

 

優秀賞:若手貝画賞

昭和シェル石油株式会社「シェル美術賞」

活動内容

「シェル美術賞」は1956年に創設された、40歳以下の若手作家による平面作品の公募展。美術団体展以外の独立した美術賞がなく、才能ある新人が世に出ることが難しかった時代に、「既存の権威にとらわれず、新人を発掘して自由に賞を与えたい」との想いから始まった。過去の受賞者には赤瀬川原平、高松次郎、菅木志雄といった現代美術の先駆者らが名を連ね、近年は曽谷朝絵なども受賞。今では若手作家の登竜門として広く認知されている。

 

一次審査から徹底した現物審査を貫き、3名の審査員により、毎年1,000点近くの応募作品からグランプリ1点、審査員賞3点、審査員奨励賞3点、入選約45点が選ばれる。表彰式とあわせて実施する講評会では、受賞・入選作品一つひとつについて作家と直接対話しながら、審査員が講評を行う。

 

およそ6,000名が鑑賞する展覧会会場では、来場者投票で選ばれる「オーディエンス賞」を設けるほか、受賞者と審査員によるアーティストトークを開催。さらに当年受賞作品に加え、2012年からは過去の受賞・入選作家4名の近作と新作を展示する「シェル美術賞 アーティスト セレクション(SAS)」を開催しており、賞の厚みを感じさせる。また継続的な支援を重視し、同賞の公式サイトに歴代受賞者の作品やインタビュー、展覧会情報などを積極的に発信し、作家がより多くの人との接点が持てるよう努めている。

 

創設時より一貫して作家に寄り添い、同時代の若手作家の表現に目を向け、その動向を捉えながら少しずつかたちを変えて発展してきた。60年の歴史が賞の価値を高め、新しい絵画の可能性を開いていく。

 

評価ポイント

長年にわたり美術界に求められる仕組みを創出し、幾多の才能を見出している。

若手作家の活躍を継続的に支援することで、次世代育成に寄与している。

 

シェル美術賞2016 - 昭和シェル石油

 

 

優秀賞:建築文化接近賞

株式会社竹中工務店「季刊誌[approach]の制作」

活動内容

1960年代、世間で企業PR誌が発刊される中、建築文化を発信する媒体をつくろうと、竹中工務店は季刊誌『approach』を創刊した。64年のことだ。建築、都市そして社会へのアプローチ、さらには社会からのアプローチとの相互交流を願い、名づけられた。

 

第一号の特集は「現代建築のなかの美術」。アートディレクションは独立後間もない若きデザイナーの田中一光氏が担い、2002年まで関係は続く。表紙は、発刊の発案者でもある当時の社長・竹中錬一氏の絵画コレクションからの一枚で、以来、アート作品を採用し「本物を伝える」表紙にはこだわりを持つ。

 

52年を経た現在も、一貫して建築を取り巻く幅広い事象をテーマに設定する。2015年度の特集は、「勝見 勝――デザインの時代を拓く」、「奥出雲に刻まれた風景――たたら製鉄」、「自転車先進都市――コペンハーゲン」「葵・フーバー――創作の世界」。年4回、11,000部を発行し配布するほか、13年からはウェブでも全紙面を展開する。

 

同社は、初代が織田家の普請奉行を務めたことに端を発し、神戸進出から10年目にあたる1909年には、設計施工が一体である棟梁精神を表す「工務店」という名称を創り社名とした。400年を越えて脈々と受け継がれてきた「匠の心」は、「建築は人々の暮らしや歴史・文化・芸術などを切り離しては成り立たない」という同誌の編集精神へとつながる。

 

「想いをかたちに、未来へつなぐ」。一途な視線を普遍的なテーマで掘り下げ、同時代における建築文化を社会へ問い続けているのだ。

 

評価ポイント

社業の中で蓄積してきた知見をもとに、建築文化を多彩なコンテンツで展開している。

長年にわたり一貫した編集方針で、質の高い媒体を制作し続けている。

 

approach 2016 秋号|竹中工務店

 

 

優秀賞:東京なかつまち技芸賞

東京ミッドタウンマネジメント株式会社「Tokyo Midtown Award 2015」

活動内容

喧噪の六本木エリアにありながら、広大な緑地と多様な都市機能が融合する「東京ミッドタウン」。2007年のオープン以来、「JAPAN VALUE」=“新しい日本の価値・感性・才能”を創造・集結し、世界に発信し続ける街をコンセプトに、東京ミッドタウンマネジメントが運営する。

 

同社が街づくりの一環で取り組むのが、08年に創設した「Tokyo Midtown Award」―デザインとアートのコンペティションだ。街をステージに、次世代を担う才能を発掘・応援する目的で毎年開催、15年は総計1,566件のアイディアが寄せられた。

 

アートコンペでは、場所をいかした作品を募集する。グランプリ受賞者をハワイ大学が実施するアートプログラムに招聘するほか、受賞6件へトロフィーと賞金、制作補助金100万円を贈呈。さらに、年間3,000万人が行き交う館内パブリックスペースでの展覧会で、作品発表の機会も提供する。

 

デザインコンペの15年度の募集テーマは「おもてなし」。日本の美しい心づかいが感じられる8件が選ばれた。グランプリへの国際家具見本市「ミラノサローネ」招待に加え、受賞者へはトロフィーと賞金を贈呈、さらには作品の商品化までをサポートする。すでにヒット商品となっている「富士山グラス」や「歌舞伎フェイスパック」など、これまで12件の商品化を実現してきた。また「ミラノ・デザインウィーク」では、商品を含む歴代受賞作品の展覧会も手がけ、国際的な発信にも積極的だ。

 

明日の才能へのサポートは、多様な価値を生み出し街の息吹となる。そして、創造的な社会づくりへとつながるのだ。

 

評価ポイント

創造的な街づくりの実践から、多彩な価値の発掘・育成に貢献している。

経営資源をいかして日本の新しい才能を見出し、その魅力を国内外で多面的に発信している。

 

Tokyo Midtown Award 2016|デザイン & アート|東京ミッドタウン

 

 

優秀賞:子どもに夢を半世紀賞

東燃ゼネラルグループ「東燃ゼネラル児童文化賞」

活動内容

日本の児童文化の発展・向上に貢献した個人または団体に贈る「東燃ゼネラル児童文化賞」、創設のきっかけは旧モービル石油時代に遡る。創業70周年の記念行事として、同社シンボルマークの赤い馬をテーマに創作童話を一般公募、川端康成をはじめとする6名の審査員が選んだ作品は、童話集『赤馬物語』として全国の小学校へ寄贈され、大きな反響を呼んだ。これを機に、幅広く児童文化に目を向けようと、1966年「モービル児童文化賞」が始まる。

 

毎年、児童文化の発展に寄与する各界の有識者やメディア関係者などにより推薦される候補者から、3名の選考委員が受賞者を決定。これまでの受賞者は児童文学者や絵本作家、教育者のほか、「まんが日本昔ばなし」などテレビ番組の制作チーム、萩本欽一、ダークダックス、野草園の園長まで多岐にわたる。受賞者にはトロフィーと副賞200万円が贈られる。記念公演も開催し、受賞関係者やグループ取引先、一般公募の総勢800名を招待している。

 

2015年は同賞創設50年の節目にあたり、歴代受賞者の人形劇団プークと劇団風の子の協力を得て、東燃ゼネラルグループの操業拠点である川崎、堺、有田、市原の小学校や文化施設でアウトリーチ公演を実施。1,500人もの子ども達が夢中になって鑑賞した。地域との絆を育んだ公演は好評を博し、16年には清水で開催、今後も続けていく予定だ。

 

児童文化を育む功労者をたたえ励ましてきた本賞は、半世紀の歳月を経た。豊かな感性を求めて、これからも未来を生きる子ども達の笑顔と感動が広がる社

会を築き上げていく。

 

評価ポイント

50年にわたる賞の継続を通じて、児童文化の幅広さと奥深さを世に紹介している。

顕彰制度から子どもに夢を与えるイベントへと、活動が発展している。

 

東燃ゼネラル児童文化賞・音楽賞について - 東燃ゼネラルグループ

 

 

特別賞:文化庁長官賞

日本トランスオーシャン航空株式会社「JTA・RAC あおぞら図画コンクール」

 

活動内容

沖縄県内の島々を結ぶ懸け橋として1967年に誕生した日本トランスオーシャン航空。「うちな~の翼」である同社は81年、離島に住む小学生を対象に「あおぞら図画コンクール」を始める。沖縄本島に比べて絵画に触れる機会が少ないため、子どもたちが日々の感動を表現する機会を創出し、地元の良さを知って誇りを持つきっかけにしたい。それが、進学で島を後にした子どもたちが郷里に戻ることに結びつき、ひいては一大産業である観光業の担い手を増やし、地域貢献にもつながればとの思いだ。30回目からは関連会社との共催へとひろがり、鹿児島県奄美大島・与論島の子どもたちにも門戸を開いている。

 

募集テーマは「わたしの大好きな島」。透き通る海で泳ぐ魚や自分の姿、三線の練習風景、アダンの群落とオカヤドカリ、一夜だけ咲くサガリバナなど――指定の四つ切り画用紙には、子どもたちが捉えた日常の風景が鮮やかに描かれる。2015年は130校へ呼びかけたところ、夏休み明けには409作品が寄せられた。

 

応募作品は全てウェブに掲載、各学年で選ばれた最優秀賞・優秀賞・佳作の計54作品は、空港など4カ所で巡回展示される。表彰式も5島で開催され、その様子を各地元紙が報じる。副賞の親子ペア航空券は家族旅行に活用され、思い出がまたひとつ記憶に刻まれていく。入賞作品については、国内10都市を就航する全機内でレプリカを展示、機内誌でも紹介することで、訪問者たちにも島々の魅力を伝える。

 

近年は、親子での受賞を目にするようになった。小さな瞳が捉えた夏の景色は、時を経てまた次の小さな瞳に映ることだろう。

 

評価ポイント

地域特性をいかし、離島の子どもたちに表現する楽しさを伝えている。

経営資源を活用した文化活動により、地域の魅力を内外に発信している。

 

美ら島物語 あおぞら図画コンクール