あなたとよむ短歌 vol.35 テーマ詠「家事」結果発表 ~具体性をプラス~
テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「家事」結果発表 ~作品に具体性をプラス~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。今回はテーマ詠「家事」の結果発表です。 年末年始、いつも以上に家事に励んだ方も多いのではないでしょうか? 毎回、最後にワンポイントアドバイスも載せていますので、ぜひ入賞作品とあわせてお読みください! それではまず、最優秀賞の発表です。
掃除していた人がわかった
おそらく突然の死だったのでしょう。四十九日が過ぎ、洗面所の汚れが目立ってきて初めて亡くなった方のしていた「家事」に気づく。その時間経過の重さを感じられる一首でした。
上句の「四十九日終わった頃に洗面所を」は、音数でいうと6・7・6と短歌の定型(5・7・5・7・7)から外れているのに対し、下句の「掃除していた人がわかった」はきっちり7・7の音数になっています。定型から外れた上句は、どことなく死後の心の乱れを感じさせます。また、下句のしっかりした定型は、ある意味で死をすとんと実感できたような印象を与えています。
続いて、優秀賞2首です。
青菜散らせば香り引き立つ
宍道湖の蜆は有名ですよね。蜆汁の湯気と、青菜の緑、調理中のウキウキとした気持ちが伝わってくる一首です。「しんじこさんのしじみじる」という「し」「じ」の繰り返しも、リズムや音の楽しさにあふれています。
今回のテーマは「家事」でしたが「家事とはなんぞや」という標語に近い作品も多く寄せられました。木村さんの作品のように、自分自身や周囲に見られる具体的なエピソードを読むと、情景が伝わりやすくオリジナリティがでます。ものの名前や、産地、色、香りなど、具体性をどんどん盛り込みましょう!
(そのまんま着てまた脱げばほら元通り)
「洗いもの裏返しだよ」と指摘され、心のなかで(そのまんま着てまた脱げばほら元通り)と反論したのでしょうか。夫と妻、親子、2世代、恋人同士……。複数人で暮らすと、どうしても感覚のズレが生じるものです。うるさいなあと思ったり、言い返したり、言い返せなかったり。ささやかな日常が描かれた一首でした。
短歌ではカッコやスペース(一字空き)の使用や、句読点の使用なども制限されていません。現代短歌でも多く見られますが、石川啄木も「!」や「。」をよく使っています。前田夕暮も「、」などの使用が知られています。
佳作のご紹介です!
最後に、「惜しい……!」と感じた作品のご紹介です。
さぼれなかった着る服がなく
飼っていたペットが死んだ日も、人間は家事をします。「洗濯はさぼれなかった」とあるので、本当はとても洗濯をするような気持ちではなかったのでしょう。それでも、着る服がないから洗濯をしなければならなかった。「家事」というテーマのひとつの側面を見せた一首です。
このままでもすばらしいのですが、2点、気になった部分がありました。
1点目は「あの日」という部分。過去の「あの日」という回想を示していますが、具体的にどの日・どんな日なのかは読者には伝わりません。情景が想像しやすい表現のほうが、よりあざやかになりそうです。
2点目は最後の「~さぼれなかった/着る服がなく」という倒置法です。倒置法は、ひっくりかえして最後に持ってきた部分を際立たせる効果があります。この一首の場合は「着る服がなく」が目立つ形になっていますが、「着る服がなく」という表現自体が若干窮屈な、言葉を削りすぎている印象を受けます。もしかしたら無理に倒置法にする必要はないかもしれません。
たとえば、このような方法もあります。
足りなくなるから洗濯をした
「あの日」ではなく「朝」とすることで、朝の静かな情景が想起されるようにしました。また「着る服がなく」を「ワイシャツが足りなくなるから」とすることで、語感の窮屈さが解消されると同時に、ワイシャツを着る仕事をする主体の存在感が出るようになりました。
もちろん、これは田口さんが詠みたかった内容とは異なるかもしれません。具体性をプラスすること、語順を入れ替えることなど、推敲の方法として参考になりましたらうれしいです。
作品のご投稿ありがとうございました。引き続き、テーマ詠「動物」を募集しています!
テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。
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応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「動物」。 応募点数制限なし。 |
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賞 | 最優秀賞1点=Amazonギフト券3000円分 優秀賞2点=Amazonギフト券1000円分 佳作数点=ウェブ掲載 ※該当作品なしの場合があります。 ※作品を記事内で推敲する場合があります。 ※発送は発表月末を予定しております。 |
締切 | 2023年2月28日 |
発表 | 2023年4月1日 |