せきしろの自由律俳句　第74回「親」結果発表

2023/05/15

タグ: 川柳・俳句・短歌・詩; 投稿する; せきしろ自由律; 結果発表

【自由律俳句とは】

自由律俳句は定型ではなく、自分のリズムで詠む俳句です。

「俳句にしたい！」と感じた情景を句にしてください。（せきしろ）

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結果発表

第74回課題：親

せきしろの一句

おにぎりの中に母の時間がある

最優秀賞

私の日記を覗いた手で花に水をやっている

（島根県　キラキラ金魚　19歳）

子は日記を見られたことを知っている。親は日記を見たことを知られていないと思っている。何事もなかったように花に水をやっている。その手は日記に触れた手。様々な思いが交差している俳句。読むたびドキドキしてしまう。

優秀賞

切り過ぎたすいかは結局母の口へ

（奈良県　りんご月　17歳）

私の家はスイカを切りすぎるということがなかった。なぜならすべて私と弟が食べてしまうからだ。だから余るということがなかったのだ。そんなことを思い出して、ふと思う。母親の分はあったのだろうかと。

あの日の花火を近くする肩車

（東京都　稲葉智子　43歳）

父親が肩車してくれたのなら父親以上の目線になる。それは父親よりも花火に近づけていて、父親よりも花火がよく見えたということでもある。それは当たり前のことなのだが、今考えると悲しくなってしまうことがある。

佳作

痩せた手とじゃんけんしている
（栃木県　六井象　35歳）

手を引く立場が入れ替わってる
（東京都　蛸壺　21歳）

悪口を言ってた人と笑っている
（大阪府　フルカワ　31歳）

まだおかずくれようとする朱塗剥げた箸
（兵庫県　天野ボンド　47歳）

春の街にて父をクレープの店へ誘う
（東京都　汐海　岬　50歳）

駅前変わっただろと久々に聞く父の声
（東京都　ビールおかわり　51歳）

イデオンの面白さを親に教わる
（茨城県　かずんど　58歳）

父の同僚に会う
（千葉県　xissa　57歳）

母が縮む日だまり
（北海道　福永敬子　56歳）

たまに親になる
（千葉県　千葉信子　92歳）

親が動かすマリオ
（長崎県　毎日ハッピー　45歳）

探したはずの所から母が見つけてくる
（兵庫県　地平線　19歳）

くしゃみで父の居場所を知る
（山形県　麻婆拓也　19歳）

どこにいても何をしても面影
（北海道　ささみ　20歳）

もうすぐ送られてくるミカン
（東京都　みすいすみ　20歳）

古い手を盗み見る車窓
（千葉県　桜那恵　25歳）

笑う母親叩きながら泣く子
（岐阜県　次元　31歳）

また弟の名前で呼ばれた
（北海道　エリンギ　35歳）

父親も葬式で泣いている
（群馬県　伊藤どらやき　49歳）

耳遠く筆をとる
（埼玉県　所K子　52歳）

今月の総評

『痩せた手とじゃんけんしている』。私の実家では痩せた手がyoutubeを見ようとしている光景がある。『手を引く立場が入れ替わってる』。年月による逆転。手を引くだけではなく、何かを教える時にも逆転を感じる。『悪口を言ってた人と笑っている』。幼い頃思っていた大人の不思議のひとつ。『まだおかずくれようとする朱塗剥げた箸』。ラップがかけられた小皿やタッパーが次々出てくる。『春の街にて父をクレープの店へ誘う』。明るくて良い香りがしてきそうな句だ。『駅前変わっただろと久々に聞く父の声』。我が家では私から「駅前変わったなあ」と言う。『イデオンの面白さを親に教わる』。私は年上の親戚に教わった。『父の同僚に会う』。子供の頃に会うより、大人になってから会うと父親の知らなかった部分にほんの少しだけ触れた気になる。『母が縮む日だまり』。静かでのどかで優しい日だまり。『たまに親になる』。親としての振舞い。言葉。いくつになっても親である。『親が動かすマリオ』。私の頃は親がやるマリオの動きがぎこちなかったが、今の親は上手い人も多いだろう。