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小さな感情と生活から、短歌をつくる「第13回青の國若山牧水短歌大会」

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川柳・俳句・短歌・詩
公募ニュース

日向市は第13回青の國若山牧水短歌大会を開催します。一般の部と小・中・高の学生部門があり、一般部門は全国から、学生部門は宮崎県内在住者から応募を受け付けます。大賞受賞者には記念品を授与。締切は2023年8月10日です。

 

あくがれの心

若山牧水は「あくがれの歌人」です。あくがれとは、求めるものに向かって、意志をもって追い求めていく精神のこと。あくがれの心を後世に伝えることが、青の国若山牧水短歌大会の目的のひとつです。

 

「……私は私の歌をもって、私の旅のその一歩一歩のひびきであると思いなしている。言いかえれば、私の歌はその時々の、私の命の砕片である(若山牧水記念文学館HPより)」

 

牧水は上記の言葉を残しています。彼は自然や旅のなかで、優れた短歌を多く残しました。旅をし自分の体で自然を感じ、その時々を短歌にして残すことが、牧水にとっての「あくがれ」を実践する手段だったのです。すなわち、人間は自然の一部なのだと理解することは、あくがれの心に近づく良い方法といえるでしょう。

 

いやぁ……

そう言われても、「人間は自然の一部なのだと理解する」というのもなかなか難しいですよね。

 

 

牧水は一日一升の酒を飲む

これから短歌をはじめる人にとっては、「あくがれ」を理解しながら制作するのは難しい。長く自然に触れ、その体験から短歌を詠んできた人ならいざしらず、です。

 

一方で、崇高な感じの牧水にも人間味のあるエピソードがあります。彼は無類のお酒好き。晩年には、一日一升の酒を飲んでいます。さらには「今日は仕事が捗ったから」とか「ちょっと気分が晴々しないから」などと理由をつけ、お酒を追加していった逸話が残っています。

 

白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり

 

牧水は、お酒の歌も多く残しました。歯に「しみとほる(染み透る)」という表現から、ゆっくりゆっくりとお酒を楽しんでいる様子が伝わってきますね。

 

 

生活を歌に

牧水にとっては、自然だけでなく、お酒もなくてはならないものでした。大きなことを志向するのも素晴らしいですが、一方で、お酒との付き合いのようなささやかな事柄に目を向けるのも作歌には大切です。

 

特別な出来事は何もないと思える生活の中にも、美味しかったご飯や嬉しかった思い出、あるいはムカムカしたこと、嫌いな人が浮かび上がるのではないでしょうか。そんな、誰にも言わないくらい小さな景色を短歌として書き留めてみる。

  

幸せだ!バスが涼しい!幸せだ!バスが涼しい!バスが涼しい!


『虹を見つける達人/逢坂みずき』

 

たとえば、上記の短歌。暑い夏にバスに乗り込む。全身で感じる冷房の涼しさだけが描かれています。シンプルで小さな喜びでもいいのです。なんでもないことなのだけど、その瞬間、本当に嬉しかったということが感嘆符の多用によってもよく伝わってきます。

 

外国はここよりずっと遠いから友達の置いてゆく自転車


『光と私語/𠮷田恭大』

 

感傷。友達が外国に行ってしまうから、その友達の自転車が置いていかれる。それだけを詠った短歌です。自然な言葉で言いなおせば、「外国に行ってしまうから友達が自転車を置いてゆく」でしょうか。韻文に乗せた、理由の語り方の不自然さが、その事実をまだ受け入れられていないことをよく伝えています。

 

最後に紹介するのは前回の青の國短歌大賞作品。この作品も、小さな感情を逃さずに短歌にした好例です。

 

声明(しやうみやう)のごとあぶらぜみ鳴く真昼それでも人はマスクしてをり


庭野治男

 

どれも世界に大きなインパクトを与える出来事・気づきではありません。しかし、それをうまく短歌に乗せれば、こんなにも優れた詩情を放つのです。まずは、思い出すところから。そして気づいて短歌にする。

 

優れた短歌をつくる道は、そこからも始まっていくはず。

 

ライター
なが

公募情報ライター。短歌がどうしようもなく好きです。好きな食べ物は油そばです。

出典: https://www.bokusui.jp/tankacontest/

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