怪異は、語ることで生まれる。怪異物語創作コンテスト「掛川百鬼紀行 第二幕」
掛川百鬼夜行実行委員会は、「掛川百鬼紀行 第二幕」の開催にあたり、創作怪異譚を募集する。
受賞作品は冊子にまとめて有償頒布されるほか、プロイラストレーターによる挿絵・シーンイラスト提供の予定も。募集期間は2023年7月16日から8月15日。
百鬼夜行と関係ないのに!?
本コンテストは静岡県掛川市を舞台にした仮装イベント「掛川百鬼夜行」の連動企画だ。地域ぐるみで行うハロウィンイベント、と聞くとありがちに思えるが、実は掛川市、「百鬼夜行」と銘打っておきながらこの手の伝承とはゆかりがない。
百鬼夜行とは、真夜中に現れる鬼や妖怪の集団行進のこと。古くは平安時代の『今昔物語集』にも登場する。絵巻に描かれた付喪神たちを思い浮かべる方もいるだろう。各地に伝承や説話が残されており、たとえば京都の一条通では「一条妖怪ストリート」と称した観光スポットに活用されている。では掛川の場合はどうか。主催者は「掛川百鬼紀行」開催の経緯をこう語る。
そのため、むしろそこを逆手にとり、歴史がないからこそ自分たちでその物語を生み出し、新しい歴史を刻もう、という経緯で始めたものです。
「ないなら新しく創っちゃえ!」マインドで始まったのが、怪異物語創作コンテスト「掛川百鬼紀行」なのだ。
母体イベントの「掛川百鬼夜行」。今年は10月29日に開催予定だ。
掛川の伝承を生かしてみよう
先に挙げた京都の一条妖怪ストリートは、地域に根付いた百鬼夜行伝説を町おこしに生かした事例である。
これに対して、今のところ百鬼夜行どころか妖怪のイメージもない掛川。そこで参考にしたいのが、主催者が公開している「掛川怪異事典」だ。
昔話や伝承を下敷きにする手法は「再話」と呼ばれている。小泉八雲の『怪談』(1904)収録作である「雪女」や「むじな」、「耳なし芳一」も再話の一種。八雲は日本の昔話や伝承に興味を持ち、自分の言葉で語り直すことで作品とした。
コンテストでも単に書き直すのではなく、独自の解釈を加えたり、現代を舞台にしたりと、あなたなりの工夫を加えてみよう。
たとえば怪異事典で紹介されている「無間の鐘」が土地開発で井戸から掘り起こされてしまった……とか。あるいは「口紅の鰻」を掘り下げて、淵でとれる鰻の口元が赤くなった由縁を描くのはどうだろう。実はそこに秘められた恋の物語が、なんてありがちかもしれないが、想像は膨らむ。
怪異は日常の裏側に
もちろん、掛川の伝承とかかわりのない、全く新しい怪異譚に挑戦しても良い。「ないなら創る」の精神こそ、一般的な怪異×町おこし事業と本コンテストを画する面白さなのだから。
最後に筆者から、怪異譚の創作を考える方にアドバイス。それは「日常のなんでも怪異になりうる」ということだ。たとえば百鬼夜行として挙げられる付喪神たちだって、もとは茶碗や傘などの日用品である。それが長い年月という一線を越えると、怪異に転じる。
橋、鳥居、扉、あるいは昼と夜の狭間……怪異は越境によって生じる場合が多い。そしてその境は、日常のどこにでも潜んでいる。怪異現象には特別なきっかけなどなく、ある意味で理不尽に生じるのだ。
想像してみよう。夕暮れ、家路を急ぐあなたは渡り慣れた橋をゆく。空は赤く、街はやけに静かだ。それでもあなたは「いつも通り」に橋を渡った。その先に、何が待っているのだろうか。
公募ガイド社の駆け出し社員。趣味は絵を描くことと漫画を読むこと。食べることも結構好き。最近は自炊を始め、目玉焼きを自分好みに焼けるようになってきた。お料理系の公募に興味がある。
出典: https://kakegawa-100kiyako.studio.site/
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