せきしろの自由律俳句 第77回「机」結果発表 (2/3)
第 77回 課題: 机
佳作
想像を膨らませる家具屋にて
(大阪府 ナックルボール 36歳)
六人掛けを六人で座る
(三重県 はっち 36歳)
机ひきよせこの距離
(千葉県 桜那恵 26歳)
落書きが成長を感じる
(滋賀県 いぬ 18歳)
彫られた名前も今では大人に
(滋賀県 こー 18歳)
机の引き出しから人生
(大阪府 雨あめ 83歳)
輪染みは四人家族
(岡山県 白とり貝 34歳)
グラスの跡をグラスで隠す
(東京都 くろまきー 30歳)
食卓に残る母の計算式の痕
(愛知県 けい瑚 72歳)
料理がのりきらない誕生日
(大阪府 へぷたーーん 55歳)
定規で隅へ追い込む
(滋賀県 ピーナッツ 17歳)
転入生の机が運ばれて来た
(北海道 シシャモ 73歳)
父の日記が開かれたまま
(愛知県 かよこ 51歳)
相合傘に母と同じ名
(神奈川県 ごまだいふく 26歳)
長机置かれ祭りの本部が完成だ
(東京都 しまこう 37歳)
違う教科の準備をしていた
(神奈川県 へやぼし 34歳)
手を伸ばしてようやく渡せるプリント
(滋賀県 わんこ 17歳)
テキストを開く父が居る
(群馬県 伊藤どらやき 50歳)
机に向かう楽しさを知る初老
(東京都 汐海 岬 52歳)
初めましての板に乗せた離乳食
(静岡県 新米ママ 39歳)
お洒落なガラステーブルで書く欠席の返事
(大阪府 石川聡 42歳)
毎日同じ木目を見る
(大阪府 猫田しろ 43歳)
引き出しが半分も開かない
(東京都 米biz 60歳)
交番に電話だけが置かれた机
(神奈川県 老人生(ろうにんせい) 66歳)
うつ伏せて近い机
(長崎県 毎日ハッピー 45歳)
テーブルの傷を触りつつ話す
(大阪府 水槽 32歳)
宿題忘れた日の机は広い
(兵庫県 田中美沙妃 32歳)
職員室で綺麗な机探し
(北海道 しき 34歳)
『想像を膨らませる家具屋にて』。家具屋は想像が膨らむ場所で、「ここにこれを置いて」とか「この系統で統一して」などとあれこれ考える。もちろん机に関してもそうで、私はいつも「この机だったら仕事が捗りそうだな」と思うのだ。『六人掛けを六人で座る』。これは至極真っ当なことを言っていて何も間違っていなくてその通りなのだが、なぜか面白くなるから不思議だ。わざわざ言語化した賜物である。『机ひきよせこの距離』。俳句における指示語は良い時とそうでない時があって、あまりにも曖昧であったり読む方に想像させる余地がありすぎると少々残念な結果になってしまうのだが、この句の「この」は良い使い方だと私は思う。『落書きが成長を感じる』と『彫られた名前も今では大人に』の時間経過が心地よく、やがて『机の引き出しから人生』となる。『輪染みは四人家族』『グラスの跡をグラスで隠す』『食卓に残る母の計算式の痕』『料理がのりきらない誕生日』はもしかしたら机というよりテーブルの方がしっくりくるのかもしれないが、どれも良い句なので選ばずにいられなかった。『定規で隅へ追い込む』の限りなく説明を省いたスタイルとそれで動きもあるのが良い。
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