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怒りも言葉に変わる 「第48回小泉信三賞全国高校生小論文コンテスト」

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慶応義塾大学が、「第48回小泉信三賞全国高校生小論文コンテスト」を開催。高校生を対象に、単なる私見ではなく何らかの裏付けや主張があり、論旨がはっきりしている「小論文」を募集している。大賞(小泉信三賞)受賞者には、賞金15万円が贈られる。締切は8月24日(木)の17時。

 

憤慨する論文

論文っておもしろい。退屈な文章なんかでは絶対にない。ちょっと次の文章を読んでほしい。

 

「何故、世の中のマジョリティを占めているのが異性愛者なのか」一般論に寄り添って考えると、疑いようもない「本能だから」という答えが見つかるだろう。だが、本当にそれは本能なのか。私はその時いかんせん憤慨していたので、それを否定する何かを見つけようと、或いは導き出そうとした。そしてこんな過程を経て生まれたのが、この「全性愛論」である。

https://www.keio.ac.jp/ja/assets/download/about/learn-more/tradition/koizumi-contest/results/koizumicontest-47-1.pdf

 

昨年度の【小泉信三賞】受賞作、「『全性愛論』~自由恋愛と異性愛規範を見つめ直して~」の冒頭部分。これは退屈な説教だろうか。そんなことはないだろう。書かれているのは筆者の苛立ち。堅苦しさなんて微塵もない。

 

こんな自由な筆致を読んだら、ついつい憧れてしまう人もいるはず。自分のモヤモヤをぶつけてやろうと思う人がいてもおかしくはない。しかし実際に書いてみると、すぐさま大きな問題に気が付く。「自分の考えとは何なのか」

 

「空気」を書く

あなたは野球部の1年生。先輩は怖い。なんで先輩の言うことを聞かなきゃいけないんだと思っている。3年生のグローブを1年生が磨くのはやっぱりおかしい。同級生は当たり前に受け入れているけれど、なんかモヤモヤする。

 

この気持ちを論文にしたいと思う。でもなかなかうまくいかない。考えているうちにあいつが嫌なんだと先輩個人を憎んでしまったり、挙句の果てには「いやだからいやなんだ」と駄々をこねてしまうかもしれない。もちろんそれでは論文にならない。ここはいったん受賞論文を見て、学べるところを盗んでみよう。

 

注目したいのは、「世の中のマジョリティを占めているのが異性愛者なのは、それが本能だからである」と書かれていること。世間の常識/価値観が記述された一節だ。それを「否定」するためにこの論文を書いたのだという。書き手が打破したいのは、こうした当たり前だということだ。

 

考えてみよう。あなたが打ち破りたいのは、野球部の常識/価値観なのではないか。「先輩の言うことは聞かなければならない」という「空気」があなたの周りに漂っていて、それに対してあなたはモヤモヤしているのではないか。

 

言われてみれば当たり前だけれど、案外誰も言ったことのない「空気」。それを明確に書き記すことこそ、論文を書く上での第一歩だ。その常識/価値観を否定できれば、それは立派な主張になるはず。明確な主張を持つことは、論理的である以上に大切なことだ。

 

まずは色々な文章を読んでみよう。論文でなくても大丈夫。いい文章ならそこには明確な主張が隠れているし、世間の「空気」もうまく言語化されているはずだ。常識に「うんうん、そうだよな」とうなずいた次の瞬間、それがガラッと覆される体験もおもしろい。

 

この魅力にとらわれたら、あなたは絶対に論文を書きたくなる。世間の当たり前をひっくり返す、そんな刺激的な夏にしよう!

 

ライター
むね

公募ガイド社の新入社員。
社会の荒波を乗りこなしていきたい。しかしカナヅチ。

出典: https://www.keio.ac.jp/ja/about/learn-more/tradition/koizumi-contest/

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