研究と創作の間で 「仙台短編文学賞」昨年度大賞受賞 髙村峰生さんインタビュー
第7回「仙台短編文学賞」が開催中。仙台・宮城・東北となんらかの関係がある、400字詰原稿用紙25~35枚程度の小説を募集しており、大賞受賞者には、賞金30万円が贈られる。締切は11月15日。
アカデミックに創作を考える
「小説の書き方」を教える本はどれも似ている。「物語には対立・葛藤が必要」、「起承転結を意識しよう」等々。もちろんそれらは正しく役立つ考え方だが、たまには少し違った角度から創作論を語れないか……。
今回お話を伺ったのは、昨年度「仙台短編文学賞」大賞受賞者の髙村峰生さん。なんと現役バリバリの文学研究者だ。ちょっと知的な小説の読み方・書き方を学んでみよう。
行動を描くこと
経歴は第6回「仙台短編文学賞」受賞者決定のお知らせ(2023年3月4日)から引用させていただきました。
——仙台短編文学賞は、その名の通り短編を募集する作品です。ジャンルのようなものは意識されたのでしょうか。
そうですね。短編と長編はやっぱり異なるものですから。狙いが違う、といえるでしょう。
——狙い?
短編はある特定の時空間の状況を描くものなんですね。人の一生を描くのは長編にしかできない。断片をうまく切り取ることさえできれば、短編は成立するんです。重要な出来事が一つ起こればいい。
——詳しく教えてください。
ある出来事が起こると生活や人の世界像が変わってしまう、そういうことがありますね。新しい状況に対して、キャラクターがどのような反応をするのか。そういったことを描くのが短編の役割だと思います。
——出来事が起こって、それに対して登場人物がどう思ったのかを書くと。
登場人物が思ったことを書くというよりは、むしろただ単に行動してもらう。しゃべってもらう。なんでこの人はこんな風に行動するんだろうとかはあまり述べず、ただ動きだけを捉えていく。「〇〇と思った」みたいな人物の思考を決定する表現は避けた方がよいと思います。
——意外な感じがします。登場人物の感情を捉えることが創作の至上命題であると思っていました。
基本的には純文学の話だと思います、これは。長編やエンターテイメント作品では心理を描かなければならないかもしれません。ただ純文学の、それも短編ということになると、やはり人物の心理は一定の幅を持たせた余白として残しておきたい。読者が想像する空間をどう作るか、というのが重要なことだと思います。
詩のスピードを生かして
——たしかに本作でも意味がひとつに決められないような箇所が頻出していますね。
詩を埋め込むこと。これも短編を書く上で重要な点かもしれません。
——どういうことでしょうか。
詩はスピードが速いんです。俳句などを考えてみれば分かると思いますが、とにかく短い文字数に、多くの意味が詰まっている。曖昧性が強いけれども、密度が高い。文字数に対して経済的とも言えます。この詩の特性を生かさない手はない。
私は25歳くらいまで、詩がよくわかりませんでした。実感としておもしろさがわからないことが多かった。一方で、それらはすぐれた作品として現在まで残り続けているわけです。結局、価値の定まった作品がわからないというのは、単純に読み手の能力不足であることが多い。感性とかの話だけではない。
——耳が痛い話です。
なんでこんな話をしたかというと、かつてわからなかった詩がある程度わかるようになったということが、間違いなく私の創作に影響を与えているわけです。それがどのような影響なのかは無意識の過程に潜り込んでいてうまく語れないけれど、確かに影響している。
そう考えると、好みの作品・ジャンルに拘泥しないことも重要なんじゃないか、と思うわけです。わからないものを、わかるようにがんばること。古典的な作品がどうして優れていると言われてきたのかを徹底的に考えること。そうやって読む訓練を続けることは、創作にも繋がってくるのだと思います。
公募ガイド社の新入社員。
社会の荒波を乗りこなしていきたい。しかしカナヅチ。
出典: https://sendaitanpenbungak.wixsite.com/award
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