最優秀賞

ポケットには鍵ひとつ

新潟県　泉　諒　23歳

創作に疲れたら、靴だけつっかけて近くの公園まで歩きます。スマホも持たず、ポケットには鍵ひとつ。ベンチに腰かけて、鳩を眺めたり、落ち葉のかさつきを聞いたり。何かを生み出そうとする手を止めて、ただ世界の「ありよう」に身を浸すような時間です。帰り道、遠くで電車の音がすると、ひとつのリズムが心に戻ってきて、また言葉を探せそうな気がします。ひとやすみは、頭よりも、身体で感じるようにしています。

佳作

寝顔でほっこり

埼玉県　かか　30歳

もうすぐ1歳になる娘がいます。

この子が生まれるまで、1人の時間を確保するのが、いかに難しいのかを知りませんでした。

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朝にゆっくりテレビを観ながらカフェラテを飲むこと、ラジオを聴きながらちょっと手の込んだご飯をつくること、お風呂に入りながらスマホでドラマをみること、ポカポカの陽の光を浴びながら読書してそのまま寝ちゃうこと、大好きだったこれらの息抜きは、今ではできなくなってしまいました。でも、どんなに大変で忙しい日々でも、子どもが寝て、こぼれ落ちそうなほっぺの寝顔を観ながらウトウトする瞬間は最高のひとやすみです。

猫カフェで浮気です

埼玉県　吉村うにうに　53歳

猫の小説を書いている私は、猫の動きや仕草を勉強するために、猫カフェに行きます。本当は、動画や文献で調べれば済む話だし、家に猫さんが一頭いるのですが、たまには大勢の猫に囲まれたいのです。

そこではソファや椅子でくつろぎながら、元気いっぱいの猫達がいて、高い所にジャンプし、跳ね回り、狩りの真似事をしている俊敏な動きに驚かされます。家の猫さんは、いつものんびりとしているので、カフェの猫と同じ種類とは思えず、新鮮です。

家に帰り、猫さんが出迎えて体を擦りつけてくるのを見ると、やっぱりうちの猫さんが一番だと改めて思います。ただ、いつもより長く臭いを嗅いでくるので「浮気しなかった？」と訊かれているようでドキリとします。

「ひとやすみ」は「つくログ」です。

大阪府　Karai　63歳

創作が順調に進んでいる時の喜びや、嬉しい受賞報告も、つくログ仲間と分かち合えばなおのこと嬉しいのです。また、創作に行き詰まった時、全力で挑んだ公募で期待空しく落選してしまった時も、つくログ仲間に報告すれば少しは気が晴れるように思うのです。

ですが、もっと根本的なことを言えば、私の場合「創作が人生のひとやすみ」なので、休みたいと思うことはあまりなくて、「もっと創作に没頭できる時間が欲しい」と思うことの方がはるかに多いのですけれど。

温かいお茶を淹れること

千葉県　モモナ　27歳

今年から本格的に文章と向き合うため、エッセイや小説を書き始めた私。

PCの前で行き詰まり、スマホをぽちぽちする時間も増えた頃、気分転換に温かいお茶を淹れます。お茶パックを入れたポットに、とぽとぽお湯を注ぎ、3分間。まだ熱いし、火傷したくないのでそのまま置いておきます。

ふとPCと向き合い、キーボードを叩く手が進み、いつの間にか時間が経った頃、ぬるくなったお茶の出来上がりです。それでも、飲みやすい温度のお茶はほっと一息の時間をくれます。

これからの季節、水出しでお茶を作るのも良いなと思い、ボトルを購入しようと考えています。お茶の沼は広そうなので、まずは足から浸かりながら楽しみたいです。