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第2回「おい・おい」選外佳作 この夏、人生初の夏バテがやってきた。 いとおかし

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<選外佳作>

この夏、人生初の夏バテがやってきた。
いとおかし(東京都・51歳)

 

 体が丈夫なことだけが取り柄の私は、中肉中背プラス少々体に巻き付いた脂肪ありぐらいの体型で、高校生の時から体重は変わらず、五十一歳の今に至っている。
 常に食欲旺盛で、スイーツから、ラーメン、とんかつと、なんでもござれの丈夫な胃袋。親に感謝してもしきれないぐらいの状態だ。
「年を取ると食欲が減って、だんだん食べられなくなるのよね」という年配の人の声を聞くと、私にもいつかそんな日が来るかも? 私が大好物のとんかつを、要らないという日が来るのだと、そんな日を楽しみに待っていたが、待てど暮らせどそんな日は来ず。
 夏になると、虚弱体質な人が、「暑くて食事が喉を通らないので、何キロか痩せた」という話を聞くと、こちらは努力しないと痩せない体質なので、うらやましくて仕方がなかった。
 そんな状態で五十歳を過ぎてしまった。
 私に食欲がなくなる日がいつ来るのだろうと相変わらず思い続けても、脳裏に浮かぶのは、あれ食べたいなぁ、これ食べたいなぁの連続だった。
 しかし、五十歳を過ぎて半年が過ぎたころ、あれ? 私にも異変が。
 あれが食べたいこれが食べたいが、一切消え失せて、食料品売り場に買い物に行っても、
 何を買えばいいのかわからない状態になった。
 これはまさかの、夏バテか? 食欲だけでなく、気力がなくなってしまった。
 買い物に行く気すら起きなくなってしまった。買い物に行くのも大好きで、野菜売り場から順次見て、最後はお惣菜まで、きっちり見切って店を後にする。これもお買い得、あれもお買い得と、いろいろなものを買い物かごに入れては買い物して帰っていた。スーパーの買い物が何より大好きだったのに、
 この夏の暑さで参ってしまっている。スーパーで何を見ても、買いたいという気持ちが全く湧かない。湧かないことはもちろん、食べたいものも見つからない状態だ。
 運動不足を軽減させるために、いくつものスーパーを巡る。
 わくわくした気持ちも一切湧かず、夏バテという怖い状態が私の脳内にやってきてしまった。
 しかしどうしたことだろう? 体重が一向に減少しない。お腹周りに巻き付いた脂肪の見た目も変わらない。
「あれ?」全く食欲がないと言いながら、私は知らぬ間に何かを口に入れているらしい。
「夏バテちゃうやんか」と思わず心の中で自分にツッコミを入れてしまった。
(了)