東京の芸術シーンに新たな風が吹き込んだ。国際芸術祭「東京ビエンナーレ」で、現代美術家・窪田望の最新作『Inside Dementia』が公開された。この作品は、認知症患者の視点を通して世界を体験するという、前例のない試みだ。

窪田は、AIの分野で20もの特許を持つ異色のアーティスト。彼の作品は常に社会問題に切り込み、今回も例外ではない。『Inside Dementia』は、AIのDeep Fake技術を駆使し、鑑賞者自身の声で認知症患者の言葉を語らせるという斬新な手法を採用している。

体験は、鑑賞者が介護施設のスタッフとなり、認知症の「ふみさん」を東京ビエンナーレの会場まで案内するというストーリーで進行する。鑑賞者の声をAIが再現し、まるで自分が認知症患者になったかのような錯覚を引き起こす。この没入感溢れる体験は、認知症への理解を深め、社会の偏見に一石を投じる狙いがある。

窪田は「AI社会で無自覚に進むマイノリティの排斥」という重要なテーマに取り組んでいる。彼の作品コンセプト『外れ値の咆哮』は、社会から見落とされがちな存在の価値を再評価しようとする試みだ。

『Inside Dementia』は、エトワール海渡リビング館（千代田区）にて2025年10月17日から12月14日まで展示される。スマートフォンとイヤホンを持参すれば、誰でもこの革新的な体験に参加できる。

東京ビエンナーレは、アートを通じて社会に新しい視点をもたらすプラットフォームとして注目を集めている。窪田の作品は、その中でも特に強烈なインパクトを放っており、美術界のみならず、医療や福祉の分野からも大きな関心を集めそうだ。

アートとテクノロジーの融合が生み出す新たな可能性。それは単なる展示物ではなく、社会を変える力を秘めている。『Inside Dementia』は、私たちに何を問いかけ、どのような気づきをもたらすのか。その答えを見つけるため、多くの人々が足を運ぶことだろう。

出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000081.000038825.html