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第50回「小説でもどうぞ」佳作 生命体進化ゲーム 白浜釘之

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小説
小説でもどうぞ
第50回結果発表
課 題

まちがい

※応募数309編
生命体進化ゲーム 
白浜釘之

 どこで間違ったのだろう。
 おびただしい数の核兵器の爆発によって巻き上げられた噴煙に覆われた惑星の表面を呆然と眺めながら私は必死に頭を巡らせた。
 生命の誕生から数十億年、私なりにこの星の環境を整えてちゃんと進化を導いてきたはずなのに。
 中心となる恒星から適当な距離を置いた惑星に生命の元となる有機化合物を見つけ出し、その生物を進化させるゲームは、最初のうちこそほんの狭い界隈での趣味だったのだが、その奥深さと純粋な面白さからあっという間に多くの愛好家たちに広まっていった。
 私が目を付けた星は、銀河系の辺境にあり、中心の恒星もそれほど目立った大きさでもない、いたって平凡な惑星だった。
 表面が半分以上水に覆われていることも懸念材料だったが、原初生命体の発生の多くは水の中から誕生するのでその点はやりやすくもあった。
 果たして恒星系が徐々に形成され、惑星自体も大気圏に覆われて隕石の衝突などが収まってくると海の中で最初の生命が生まれた。
 やがて原初の単細胞生物は様々なものを取り込んで徐々に進化し、やがて多細胞生物になっていった。
 そして一気に進化が進み、海の中に生命が溢れると私は思わずほくそ笑んだ。
 ……なんだ、思ったよりも簡単じゃないか。
 だが、そんな私の思惑は一個の大きな隕石によって打ち砕かれてしまった。
 隕石の落下によって粉塵が舞い上がり、それは瞬く間に惑星の表面を覆いつくした。そのことによって急速に下がった海水温はせっかく順調に進化を遂げていた生命のほとんどすべてを絶滅させてしまったのだ。
 がっくりと肩を落とした私だったが、まだツキがあった。生き残った数少ない種の中から陸を目指すものが現れたのだ。
 私は早速彼らに陸棲の利点を『啓示』として与えた。彼らに対して私ができることと言えばこのくらいしかできないからだ。
 陸に上がった生物たちはやがて巨大化していった。水圧によって押さえつけられていた分と両生類から爬虫類へと進化していった彼らにとってそれが適正な進化だったからだ。
 私はまたもやワクワクしてきた。
 これだけ大きな生物がやがて文明を築き、巨大な宇宙船を駆って星系へと飛び出していくことを夢想して顔がほころんでくるのを抑えきれない。
 実際、仲間の一人は文明を生むほどの生命体を育て上げただけでなく、宇宙船を建造させ、その恒星系へと広げさせたものもいるほどだ。
 自慢げにシャトルが飛び交うその恒星系を見せびらかしてくる彼に、
「なあに、俺もそのくらいならすぐに作れるさ」
 などとうそぶいてみたもの、実際にやってみると生物が絶滅しないように見守りつつ、時折『天啓』を与えて進化を促すことしかできないという条件の中では文明を作り上げることすらなかなか難しいことがわかる。
 爬虫類はどんどん巨大化するばかりで一向に文明を築くこともなく、私が次の手を考えているうちにまたもや隕石がこの惑星を襲う。
 またしてもほとんどの生物が絶滅してしまった。しかし今回も僅かではあるが生き残った生物がおり、またもや細い糸を紡ぐように進化を続けてくれた。
 サイズ的にはぐっと小さくなり、とても文明を築くには至らないと思っていたが、それでも注意深く見守っていると、今度地表の覇権を握った種族は私の思う方向へと進化をしていった。
 二足歩行を行うようになったため手を使うようになり、それに伴い脳の容量も大きくなったため私の与える啓示を明確に理解できるようになった。それによって飛躍的な進化を遂げ、ついには文明を築き上げることができた。大型の人工物を作り上げ、都市を築き、地表をあっという間に彼らの好きなように作り替えていった。
 もちろんこの段階でもゲームの『上がり』としては十分だった。
「これが本当の文明の完成形だよ」
 と、ある惑星を育て上げた仲間の一人はそう言って自慢したものだ。彼の『作品』である生命体は高度な文明社会を築いていたが宇宙に興味を持つこともなく、ひたすら彼らの生息する星の環境を整え、完璧な都市と管理された自然が調和した見事な生活圏を作り上げていた。
「このために相当な『啓示』を与え続けなければならなかったがね」
 彼はそう言って慈しむようにその星を眺めていた。
「この環境を得るためには非常に苦労したんだ。同じ失敗を何度も繰り返してね。だけど一度や二度の失敗でくじけちゃいけない。何度も同じ間違いを繰り返すことによってしか得られない気付きというものもあるからね」
 正直、彼の理想論など聞き流していたが、今回、宇宙文明へと飛躍していこうとする直前で同種族同士の戦争によって滅びてしまった惑星を糧に、私は新たにもう一度このゲームにチャレンジしてみたくなった。
 今度はどの惑星にしようかと見まわしていくと銀河の辺境に手ごろなG型恒星が見つかった。その内側から三番目の惑星は水も豊富で、巨大な衛星が一つあるのも生命の進化を促しそうで試してみたくなった。
 よし、今度はこの惑星で生命体を育ててみよう。なあに、間違って失敗してもまた他を探せばいいんだし、気楽にチャレンジしてみることにしよう。
(了)