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第3回「おい・おい」佳作 よう来たな、ほないつ帰る? 岡本千春

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佳作

よう来たな、ほないつ帰る?
岡本千春(愛媛県・69歳)

 

 今年も頭の痛い年末がやってくる。
 年末に息子家族、娘夫婦が帰省する。
 これが、悩みの種である。
「まあお正月はお孫さん達も帰省されて、賑やかになってえぇですね」
 人には言われる。
 はぁと相槌を打ちながら、これが悩みの種なのである。
 何しろ私、六十九歳、主人七十四歳の老夫婦だけの生活、なのに、家の中は物があふれていて、片付かない。
 私はとにかくものがあるのが嫌い、で主人はものがいっぱいないと嫌。
 私は冷蔵庫のドアを開けると冷蔵庫の奥の電気が見えるぐらいスカスカがいいのに、主人と来たら、冷蔵庫は満杯でなくては気に入らない。次から次へと食料品を買っては冷蔵庫に詰めて詰めて詰めまくる。おかげで冷蔵庫は冷凍庫までもが満杯だ。
 私は捨てるのが好き。次から次へと捨てようとすると、
「置いといてくれ、後で使う」
 使った試しなぞないのに捨てさせない
 おかげで部屋は物があふれている、となれば当然、片付かない、そこへ息子娘たちが帰省する。片付いてない家に息子や娘家族を迎えられるわけもない。
 何よりこんな汚い家にしてと私が白い目で見られるので、年末となると大慌てで大掃除をする。
 私は必死になって捨てる、片付けるを繰りかえすのに、その捨てたごみ袋から主人が、
「こらまだいる、いつか使う」
 と言って端からごみ袋から出す。
 いつか使うは、絶対使わないっていうのに……。
 捨てたい私と捨てない主人との攻防が続く限り、家は片付かない。
 年末が近づいてくると、その三か月も前から大掃除が始まる。三か月かけても、まだ物があふれていて片付かない。
 年末が来るたびに、部屋を片付けるためだけに私は仕事を休み、連休を取って大掃除をしなくてはいけない、私は必死になって片付けているのに、主人と来たら、片付けるでもなく、のんびり猫とじゃれて遊んでいる。
 ちょっとは片付けるのを手伝ってくれてもいいのに、このハゲ親父め! と言いたくなる。
 どうにか見えるところだけを片付けて体裁を整え、年末を迎え、息子娘家族が帰省してくる。
「おかえりぃ~」 
 と笑顔で迎えつつも、心の中では、
「よう来たな、ほないつ帰る?」
 孫との楽しい正月というよりは、片付けることで疲れ切って正月となり、三が日が終わると毎年、精魂尽き果てている。
(了)