第3回「おい・おい」佳作 若さというエネルギーが与えるもの 七羽こむぎ


佳作
若さというエネルギーが与えるもの
七羽こむぎ(栃木県・41歳)
私に娘が産まれてから、年末年始は必ず帰省することにしている。
両親と過ごす時間を大切にしたいというのもあるが、四歳になる娘を会わせたい気持ちが強い。
毎日育児でへとへとだけど、実家に行くと、母が娘の相手をしてくれるのでとてもありがたい。「ちょっと大変だけど、運動にもなるしいい機会だわ」と言ってくれる母。俊敏に動き回る娘を見ては、「よくそんなに速く動けるわねえ~」と、子どものエネルギーに圧倒されている。
そんな二人の交流を見ていると、思い出すことがある。
私がまだ実家に住んでいた頃、ぶーちゃんとクロという二匹の猫を飼っていた。どちらも長生きで、私が家を出る頃にはもう立派な老猫になっていた。
あるお正月、私が帰省すると、知らない仔猫が実家にいた。
突然迷い込んできて、放っておけないからと飼うことにしたらしい。実家の猫メンバーの仲間入りを果たしたその子は、見た目がイリオモテヤマネコみたいだから、イリちゃんと名づけられた。
その帰省中に、大きな地震が起きた。
ひどい揺れの中、「猫たちは大丈夫か」と目を向けると、イリちゃんがものすごい速さで玄関から外へ飛び出すところだった。揺れと同時に飛び出すその瞬発力。「猫の危機察知能力はすごいなあ」と感心した。
一方、ぶーちゃんとクロはというと、棚の上でのんびりと並んでひなたぼっこをしていた。地震で動じるどころか、微動だにせず、棚と一緒に揺れているだけだった。その姿を見て、「猫であっても、若さと老いの差がこんなにもあるのか…」と思ったものだ。
そんな突如現れたエネルギーの塊みたいな若猫は、老猫二匹の生活を大きく変えた。
しばらくして再び帰省すると、また知らない猫がいた。しかしよく見ると、その猫はぶーちゃんだった。まるまる太っているから「ぶーちゃん」と名付けたのに、ほっそりスリムになっていて、まるで別の猫のようになっていた。どうやらイリちゃんに追いかけ回され、じゃれつかれ、自然とダイエットしてしまったようだ。クロも心なしか足腰がしっかりして、若い頃のようにしゃっきりとしていた。
三匹は全員長生きした末にこの世を去ってしまったが、実家で娘にじゃれつかれている母を見ると、あの子たちを思い出す。
若い世代のエネルギーが上の世代に与える影響は大きい。
今年の年末年始も実家に帰省しよう。
そして、母が疲れない程度に娘と遊んでくれたらいいなと思う。
(了)