第3回「おい・おい」選外佳作 年末年始 北斗優


年末年始
北斗優(愛知県・57歳)
すっかり寒くなってきた。もうあっというまに年末だ。郵便局に勤めている私としては年賀状と言いたいところであるが、年末年始といえば交換するものがある。
指サックである。
体に直接くっつくものなので使い心地は非常に重要である。この辺りはなかなか難しいのだ。
一年間使いつづけると明らかに劣化してくる。ゴムがすべってくるのだ。私はいぼつきのものを愛用しているのでちょうど一年で新しいものに買い替えることになるのだ。
しかし事件が起こった。
店がないのだ。
指にぴったり収まり、使い心地のいいあの緑色の指サック。店がなくなっていたのだ。
代替でいくつかつかってみたがどうもよろしくない。
ついでに言うと私は親指と人指し指にそれぞれ左右につけるのであるがサイズがあわない。
人指し指には小さいの、親指には大きいのを使うのだ。つまり左右で四本、これを満たすものがないのだ。
Amazonでは実際のつけた感じがわからない。仕方なく買いに出かけた。
娘の電動自転車にのってまずは家の近くの大型ショッピングモールへいった。指サックはあったが希望のものはなかった。
大きさ、付け心地、指のすべり具合、すべてを満たすものがなかなかない。口で説明するのも難しい。
「いつものあれ」では全く伝わらないのだ。
町の文具屋をいくつか回ったが自分の追い求めているものはなかった。気がつけば電動自転車のメータは半分をきっていた。
最後の挑戦ばかりに、駅に一番近いところに飛び込んだ。
目にいきなり飛び込んできた。指サックだ。
店の片隅で私をまっていた。サイズもぴったり。
「これ全部下さい」
計千八百円、店にあるものを全部かった。
これで新年を迎えられる。
(了)