第17回のゲスト選考委員は、額賀澪さん。
デビュー11年目を迎え、単著は40冊を超えます。
そんな額賀さんに小説の書き方について聞きました。
季刊公募ガイドの巻頭インタビューの別バージョンです!
デビュー3年経たないうちに
会社を辞めて専業作家に
―― 今年でデビュー11年目になり、すでに著作も40、50冊になりますね。
ノベライズを含めると、単著は43冊になります。
―― その筆力は一朝一夕に身につくわけではないと思いますが、子どものときは、どういう本を読んでいたのですか。
小学校のときは、「ハリー・ポッター」シリーズですね。『ハリー・ポッターと賢者の石』が出たのが、確か小学校2、3年のときでした。
小学校高学年から中学生にかけては、「青い鳥文庫」のはやみねかおるさん、松原秀行さんの「パスワード探偵団」シリーズに熱中していました。それから、あさのあつこさん、佐藤多佳子さん、森絵都さん。一番読んでいたのは、重松清さんですね。
―― 重松清さんはいじめを扱っていますね。
重松清さんが1990年代に書かれた小説が2000年代になって文庫化され、学校の図書室に入ってきたのだと思います。いじめ、10代の自殺など社会問題をテーマにした小説が多かったから、子どもながらに興味があって読んでいました。
―― 重松清さんの小説はずしっときますよね。
シリアス過ぎて児童書には書かれていない部分があり、子どもながらに疑問に思うことがありましたが、重松さんの小説にはそれが書かれていたんですよね。それで惹かれたのだと思います。
―― その後、日大芸術学部を経て広告会社に就職し、松本清張賞と小学館文庫小説賞を受賞しますが、専業作家になるのも早かったですね。
デビューして3年経たないうちぐらいですから、今、思うと早かったなと思います。
―― 不安はなかったですか。
専業になるのが不安というより、兼業でやるのは無理だとなっていました。2015年にデビューし、2016年にはいろんな版元から声をかけていただいて、働きながらだと年に2冊が限界でした。そうなると、今、目の前で打ち合わせをしている熱心な編集さんのところで書くのは8年先だなと思い、8年先だと下手したら異動等でもういないかもしれないじゃないですか。
―― 各社、順番待ちみたいな感じになっていたわけですね。
皆さん、何年でも待ちますと言ってくださるんですが、8年も待ってもらうって、それってもう約束じゃないよなと思いましたし、何より私自身が早く書きたいと思っていました。時事ネタが絡むようなものだと、年2冊で回していたら書けなくなる題材もあり、誰かに書かれる前に書きたいということもありました。
社会性やコミュ力は
作品に如実に表れる
―― 昨年、『小説家デビュー1年目の教科書』を出されましたが、デビュー当時の経験が役に立ったんですね。
作家という個人事業主としてどう動くのがいいのか、専業作家になってからのほうが考えるようになりました。この本は、最初は同人誌のお遊び企画だったのですが、星海社さんが面白いから本にしましょうと。
―― デビューした新人作家の方に一番言いたいこととはなんですか。
社会性ですね。作品そのものもそうですが、作家としての振る舞いや仕事の仕方もそうですが、すべてにその人の社会性がでます。プロとして書き続けたいのなら、社会性を軽視しないほうがいいです。
―― 具体的に言うと?
人とのつながりとか、人と対話するとか、自分の意見を言う、相手の意見を聞くということです。
小説は編集者さんと二人三脚で作っていくところがありますが、その人が「このプロットではやりたくない」と言ったときにどう振る舞うか。なんでもホイホイ受けて言うことを聞くのが社会性ではないし、相手がなぜそういうことを言うのか考えてわからなかったら聞いて、相手にはこういう事情や考え方があって言っているんだとわかったら、こういう形でなら叶えられるかもしれないと話し合うとか。意外とそれができない人がいるんです。
―― 作家志望の方には多いかもしれません。
社会性はやはり作品に出ると思うんですよね。要は自分ではない人間に文章を通して物語をお見せしようというのが小説じゃないですか。そのとき、自分ではない他者がこの文章を読んでどう感じるかを考えられないと面白い小説は書けません。
―― 評価するのは読者ですよね。
自分だけ楽しんでいても意味がないのが小説という媒体だと思います。この文章は読みやすいか、読んでいて情景が思い浮かぶか、この展開は面白いかは、顔の見えない読者のことを想像できて初めて答えがでます。書いている人間の社会性やコミュニケーション力が如実に作品に表れるのです。
小説家というと、社会性やコミュニケーション力を放棄してもいいって思われがちですが、そんなことはありません。高度な対人能力を持てとは言いませんが、せめて社会に向かって開かれたマインドは持っていたいですね。
―― 今、母校の日大芸術でも教えていますね。
2018 年に大正大学で、2020年からは日大でも教えています。日大では座学の授業ではなくてゼミを持たせてもらっていて、学生に小説を書いてもらって、みんなで合評しています。
―― 合評って難しくないですか。当たり障りのない意見では役に立たないですが、あまり辛辣なことを言われても凹みます。
学生には、まずいいところを探すところから始めなさいと言っています。悪いところはすぐ見つかるんですよ。でも、いいところは読み込まないと絶対出てきません。いいところから探していって、その過程で、その作品の至らないところを見つけたら、合評では自分なりに考えた改善案を提示しなさいと指示しています。
―― それはいいですね。
「主人公の行動に矛盾があったのが気になりました」と言ったとしたら、「これを改善するためには、主人公がこのセリフを言うことに違和感がない状況を作らなければいけないから、ラストシーンの前に主人公がこういう心境になるエピソードを一つ入れておくべきだったのではないかと思います」というところまで言えば、言われた側も役に立ちますし、言った側にもメリットがある合評になります。
型にはまることを
恐れないほうがいい
―― 3月に『1冊目に読みたい小説の書き方の教科書』が出版されましたが、その内容には学生に教える経験から得たこともありますか。
ほぼそうですね。プロだったら深く考えないでできてしまうことがいっぱいあって、それを全部いったん言語化して、プロセスに落とし込もうというのを授業でやっていますが、ふだん大学で授業してることを文章にわかりやすくまとめて1冊にしたのがこの本なんです。
―― 小説1年目の教科書ですね。
シーンの書き方がわからないという学生には、「シーンの中心には人間が必要で、どういう場所で、今、誰が何をしているのかを見せていくのがシーンだから、書き出しで〈昼休みの教室は賑やかだった。〉のように場所や情景を見せていかないとシーンが立ち上がらないんだよ」と説明すると、ふだん読んでいる小説と今から書かなければいけないものがリンクし、「ふだん読んでいる小説もそうだった」となるみたいですね。
―― 読んだことはあるけど、どう書けばいいかわからないのですね。
ふだん焼きそばを食べていれば、キャベツとピーマンと玉ねぎと豚肉を買ってくれば、焼きそばは作れるでしょと思ってしまうんですが、レシピがわからないようです。
―― レベルに応じた指導法がありますよね。
精神論ももちろん重要ですが、右も左もわからない人にはあまり役に立ちません。「地の文をどう書けばいいかわかりません」のような質問に、「小説はどう書いてもいいものだ、定型はないんだ」と言っても困るだけです。
―― 「自由に書きなさい」が一番困ります。
作文や美術は好きだし、得意だったので困ったことはなかったですが、改めて振り返ってみると、学校では技術を教える前に「自由に書け」と言います。あれって難しいですよね。自由に表現することに重きをおきすぎると、テクニックをないがしろにしがちです。
―― 初心者は型があると楽です。
『1冊目に読みたい小説の書き方の教科書』は、その型をひたすら提示しています。書こうとしている側も、型を軽んじがちなんですよ。型にはまったような書き方をしたら個性が潰れるとか、型どおりのやり方ではプロにはなれないと言うプロは、無意識に型を習得したうえで型破りができている人たちです。片や、プロでもないのに型はいらないと言う人は、自分のことを型破りだと思っている型なしさんです。
―― 特に構成には型があります。
小説は型にはまることを恐れないほうがいいですね。シーンの書き出しはこうだよねとか、情景描写ってこうだよねというのをまず恐れずにやり、これが当たり前に使えるようになると、自然とそこに個性がでてきます。
―― よく「ベタだね」という批判がありますが、いいからベタになったわけですよね。
初心者の段階では、王道を恐れないことですね。
応募要項
課 題
■第17回 [ 誘惑 ]
「誘惑」……いいことばですね。なんとなく美しく、甘く、しかも危険な感じ。人からの誘惑、事柄から、ものからの誘惑。そして、誘惑にのるか、避けるか、飛びこむか。みなさんは、どうしますか?
(高橋源一郎)
締 切
■第17回 [ 誘惑 ]
2026/5/9(23:59)
応募規定
400字詰原稿用紙の換算枚数本文5枚厳守(数行の増減は可)。
データ原稿はA4判40字×30行、縦書きの設定を推奨します。
(テキストデータは横書きでかまいません)
枚数が規定どおりか調べたいなら便宜的に20字×20行の設定にし、最終ページを見れば5枚ちょうどかどうかがわかります。
応募方法
WEB応募に限ります。
応募専用ページにアクセスし、作品をアップロード。
(ファイル名は「第17回_作品名_作者名」とし、ファイル名に左記以外の記号類、および全角は使用不可)
作品の1行目にタイトル、2行目に氏名(ペンネームを使うときはペンネーム)、3行目を空けて4行目から本文をお書きください。
本文以外の字数は規定枚数(字数)にカウントしません。
Wordの方は作品にノンブル(ページ数)をふってください。
応募点数3編以内。作品の返却は不可。
Wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
応募条件
作品は未発表オリジナル作品に限ります。
入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属します。
AIを使用して書いた作品はご遠慮ください。
入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
応募者には公募ガイド社から公募やイベントに関する情報をお知らせすることがあります。
発 表
第17回・2026/7/9、季刊公募ガイド夏号誌上
賞
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※最優秀賞が複数あった場合は按分とします。
※発表月の翌月初旬頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。
お問い合わせ先
ten@koubo.co.jp
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受講料 5,500円
https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/