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はそやm

#第38回どうぞ落選供養 安定の落選ですが、やはり少しは悔しいです。 先月は投稿できずに終わったので今月からまた頑張ります! 「語り継がれるサプライズ人事」 サプライズ人事があると聞き、なんとなく空気が華やいだ。「どんなサプライズだろうね」「サプライズと言いながら普通の人事だったりして」「それ、夢なさすぎ」人事発表の時間だというのに部長が戻ってこないため社員達のザワつきは大きくなる。希望に胸膨らますもの、期待し過ぎてがっかりしないよう予防線を張るものでヒソヒソとした会話が続く。今日は人事発表だというのは会社が言っているのだから別に声をひそめずともいいのだが、なんとなく秘密めいた気持ちが伝染してヒソヒソ声になってしまう。「俺が突然、新プロジェクトのチームリーダーとか?」「それ、サプライズじゃなくて悪夢」緊張のあまり冗談を言った社員に対し冗談で返そうとしたが、そう取られず無言となってしまい気まずい雰囲気が流れる。他の社員が慌てて話をそらそうと、「普通の昇進じゃサプライズじゃないよな」「じゃあ昇進しようにない人が抜擢ってこと?」誰がなるのか予測してみようと話題を振ってみたが、最近の業績を振り返ってもマイナスばかりでサプライズで起用されるような人材を思いつかない。もし、平社員が突然役職をつけられてもサプライズとして喜ぶより責任の重さから罰ゲームと感じてしまいそうだ。人事発表を行う部長がなかなか現れないため、みんなの期待がだんだんと不安へと移行しかけたその時、部長がようやく表れた。「みんなお待たせ」ニコニコと笑顔の部長を見て悪い話ではなさそうだと、みんながホッとする。「新しい人事を発表します」と言う部長の周りに社員が集まった。部長の表情からして悪い人事ではなさそうだと判断し、サプライズを聞き逃すまいとの気持ちから集まったのだが。その場にいた一同が部長に違和感を感じる。なぜか部長は両手を前に突き出し、握りしめたままの状態で立っていたからだ。いや、握りしめるというよりふんわりと両手で包んでいるといったほうが相応しいか。「部長?」近くの社員が声をかける。「ん?」「手の中になにか入っているんですか?」あはは、勘がいいねと笑いながら部長は両手を開いた。そこには小さな人形がちんまりと座っていた。「に……んぎょう?」部長はかなり男らしい見た目で人形を手の中に隠し持つタイプではない。部長と人形、あまりにかけ離れた取り合わせに一同驚く。「人形じゃないよ、こ・び・と」部長が当たり前のように言うので、ご冗談をと言おうとしたのだが人形が立ち上がったので数人がギャッと叫ぶ。「勝手に人形が動いた!」「人形じゃないよ、こびとだよ」部長がそう紹介すると人形、いやこびとが周囲を見回してからペコリと頭を下げた。「新しいプロジェクトのリーダーとなった、こびとです」「しゃ、しゃべった!」「しゃべるよ!こびとだもの」あはははと笑う部長を社員達は気味悪げに見つめる。「しょうがないよね、私も最初は社長室で君達と同じような反応をしたもの」部長も社長室でこびとを紹介された時は驚きのあまり腰を抜かしそうになったそうだ。社長の手のひらで動くこびとを現実のものとして受け入れられなかったのだという。しかし、健気に部長に向かって挨拶をするこびとを見ているうちに、「可愛さが増してきちゃってさ」とろけるような顔で部長は話す。「社長と二人しばらくこびとさんに見惚れてしまったのだよ」「だから人事発表が遅れたんですね……って、こびとが新プロジェクトのチームリーダーってどういうことですか!」「そのままの意味だよ」手のひらの上のこびとをなでながらとろけそうな顔で部長は答える。「こびとが新プロジェクトのチームリーダーって……」強硬に反対しようとした社員は文句を続けようとしたのだが、こびとを見た瞬間、力が抜けた。そして、思わずこびとにかけより人差し指でちょいちょいとこびとの頬を撫でた。「明日からチームリーダーとして一生懸命がんばります。みなさんよろしくお願いします」指先でなでられ、くすぐったそうにしているこびとが真面目な表情で就任のあいさつを述べる。プチプチプチ。その場にいた全ての社員の理性が切れ、こびとに殺到した。順番に優しくなでられながら、こびとは共に働きましょうと挨拶をしている。その健気な姿を見て部長はキュンとしながら、このサプライズは成功したと満足そうにうなずいた。「おお~い!私にもう一回なでさせてくれないか?」「どうだね、新しいチームリーダーは?」「社長のお考え通り、こびとさんを中心に結束力が高まり素晴らしい成果をおさめそうです」「そうか」こびとの可愛さを十二分に活かした新プロジェクトは大成功となりサプライズ人事のお手本として語り継がれた。

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