近所の寺は「勝」の字で溢れている。勝、と書かれた勝ちダルマが、境内のあちこちに置かれているのだ。私は子どもの頃から競争が苦手で、皆がどうしてそんなに勝ちを祈るのか分からなかった。そんな私が一人で寺を訪れたのは高校一年生の春。弱気な自分に打ち勝ち夢を追うため、静かに鳥居をくぐった。