文章表現トレーニングジム 佳作「私の原体験とは何だろう?」未来歩
第23回 文章表現トレーニングジム 佳作「私の原体験とは何だろう?」未来歩
小学1年生の頃に父方の祖母が亡くなった。父の実家は農家であり父は数多くいる兄弟の末っ子で中学卒業と同時に都会に働きに出ており、その当時は、父の勤める工場から自転車で片道三十分もかかるアパートに住んでいた。子供たちの健康を考えて少しでも空気の綺麗なところに住みたいという親心だったのかもしれない。しかし、アパートの前の川はどぶ川で普段から臭いにおいがしていた。遊びで、近所の子供達が、川に浸かって遊ぶこともなかった。子供心にも、「汚い」と感じていた。
祖母の葬式で訪れた、初めて私の記憶に残る父の実家の周りは、みんな田んぼで、シロツメ草があたり一面に生えていて綺麗だった。大人たちが葬式の準備で慌ただしくしている中で、別の都会に住む四歳上の従姉と畑で遊んだ際に、従姉が私にシロツメ草で器用に花冠を作ってくれた。私は何を思ったのか、祖母と一緒に遊んだ記憶もないのに従姉に「おばあちゃんにも見せてあげよう。」と従姉の手を取り二人で棺桶の中にいる祖母に会いに行った。従姉は「怖いから嫌」と私の手を離して隠れた。私は、大人たちが棺桶の周りを取り囲んでいる中に一人で進んで祖母の胸に花冠をのせた。その時、祖母の死に顔を初めて見た。
この人はもう花冠を見ることは出来ないのだなとその時、思った。人生には終わりがあると悟った経験であり、その日から、私は、自分が生きることの意味を探し続けている。