文章表現トレーニングジム 佳作「トイレ掃除」久野しづ
第23回 文章表現トレーニングジム 佳作「トイレ掃除」久野しづ
母親がトイレ掃除が嫌いだったため、常にトイレが汚かった。母いわく、
「ポットンだから掃除してもきれいにならないわ」
それで、私は納得させられていたが、トイレが水洗になっても、依然うちのトイレは汚いままだった。
小学生になると、学校でトイレ掃除の仕方を覚えた。自然と家のトイレ掃除は、私が当番になっていった。
それを知った祖母が、
「トイレ掃除をする娘は美人さんになるよ」
と褒めてくれた。だから、ますます、私はトイレ掃除に力を入れるようになっていった。
今でもよくみる悪夢がある。出先でものすごく汚れたトイレに入ってしまった夢。半年に一度はみる。最近はどこの商業施設でもトイレは清潔にしているので、現実には汚いトイレに出合うことはほとんどないのだけれど。
子どもの頃、トイレ掃除代を親に請求すればよかったと今になって思う。自らのクソ真面目な性格、要領の悪さをのろう。
ともあれ、結婚してトイレが一階と二階に二つあるようになっても、掃除が苦にならない。悪夢とは真逆でいつもピカピカだ。
ただし、祖母が言っていたような美人さんにはならなかったけれど。