文章表現トレーニングジム 佳作「不細工ソフトクリーム」木村恵梨
第20回 文章表現トレーニングジム 佳作「不細工ソフトクリーム」木村恵梨
近所のスーパーのサービスカウンター内にソフトクリームコーナーが出来ていた。最近始まったらしく、私は夫のぶんと2つ注文した。
店員から差し出されたソフトクリームに言葉を失った。角はグッタリ横を向き、巻きは2つしかなかった。大きさも既に誰かが半分食べてしまったのではないかと思うほど少量サイズだった。こんなに不細工なソフトクリームは生まれて初めて見た。滅多にクレームなど口にしない私だが、反射的に、
「さすがに……ちょっとこれは」と言ってしまった。なんと作った定員のおばさんは笑みを浮かべて、
「私今日初めて作ったものだから」と頑としてソフトクリームを引っ込めなかった。
私が固まっていると、先輩定員らしきおばさんがすっ飛んで来て「いいからやり直して!」
と小声で叱った。おばさんは納得がいかない顔をして渋々作り直し始めた。先輩おばさんが横で教えていたが何度やっても上手くいかないらしく、離れた所にいた夫も(まだ?)という視線を送ってきたので、勇気を出して、
「あの! やっぱり今日はいいです。また今度来ます」と言ってみたが、
「いえ! 今お持ちしますから!」とピシャリと断られてしまった。
やっと完成したソフトクリームを見て目を疑った。2倍はあろうかという巨大ソフトクリームだったのだ。私は何か言うのも失せて、受け取った2つのソフトクリームを倒れないよう注意しながらヨロヨロと夫のもとへ歩いて行った。