文章表現トレーニングジム 佳作「15の春」高橋さや
第20回 文章表現トレーニングジム 佳作「15の春」高橋さや
高校一年生、15の春に出会って友だちになった二人。わたしを入れて三人で、仲良く行動を共にしてきた。もちろんトイレへ行く時も一緒だった。卒業し、別々の道に分かれて就職しても、年に一度は声をかけ合い会っては話し込んで来た。
お互いの結婚式に出たし、子どもが生まれたら子連れで遊んで今日まできた。会わない時があっても、顔を合わせればすぐに15歳に戻って話が弾むのだ。
ある時、S子が言い出す。
「ねえ、桜満開の木の下で、毎年会わないか?きっとステキだよ」
「いいねえ、それ、賛成」
と、なったのだが、雪国の桜の開花は予想を立てにくい。大雪の冬が明け、まだだなと思っているとアッという間に咲いてしまう。来週こそと計画を立てると、散ってしまうのだ。
しかも三人とも仕事をしていると、休みを合わせるだけで大変なのだ。
「今年こそ、桜満開の日に会おう」
「うん、そうしよう」
と、言いながら、今年会えた日のつぼみは固かった。つぼみを見上げて残念がった。
「来年こそ見ようね」
いつも待ち合わせる公園の桜は、通った高校の近くにある。高校は移転し、今は高いマンションが建っている。子育ては終わり、仕事も辞めた。来年こそ会えるだろうか。満開の桜の下で、15歳になって。