文章表現トレーニングジム 佳作「捨てねこ」多岐j
第20回 文章表現トレーニングジム 佳作「捨てねこ」多岐j
近所の民家の裏は元々、小川が流れ、土手には季節の花々が咲いていたらしく、魚釣りしたら大漁だし、カニやうなぎもいたという。
それが、いつしか土手に木や竹が生い茂り、今ではちょっとした渓谷の様相だ。それはそれで季節ごとに鮮やかな姿を見せてくれる。この夏も多くのセミが鳴いていた。そしてやっぱり今年もそれが起こった。
もう五日も森の奥で捨てられた子ねこが鳴いている。
森の深さがいつしかここは置き去りにするには最適な場所となってしまっていた。
始まりは、森どころか土手の手前の砂利道から一歩入った雑草がカーペットみたいに生い茂った場所にタオルケットでくるんで置いてあったことだった。
昔は、保護しやすい場へ捨てていた人も、ある時から年々、奥へ奥へと捨てるようになって助けに行けなくなって、ここ数年は子ねこが迷い歩いた挙句、近場へ来るまでは心が痛む数日となってしまっている。住民も顔を合わせれば悲痛な表情を向け合っている。
飼い主だって喜んでここへ捨てているわけじゃないでしょう。だから、百歩譲って提案する。
踏み込みやすい場所なら絶対に誰かが保護してくれます。