文章表現トレーニングジム 佳作「息子の答え合わせ」ロビンの恋人
第19回 文章表現トレーニングジム 佳作「息子の答え合わせ」ロビンの恋人
公立の小中学校に通った息子にとって、高校受験は人生の重要な分岐点だった。本人の志望校は公立高校。息子の成績では安全圏内。それでも食事も喉を通らないほど緊張したのは、息子ではない。母親の私だ。
受験の翌日には、試験問題と解答が新聞で公開される。早速、答え合わせだ。息子がはじきだした自己採点は、息子の受験高校の合格ラインを四十点も上回っていた。
「すごいじゃん。合格間違いないね」
「余裕だね」と息子。
合格発表までの二週間、心穏やかに待っていられた。それどころか、もっと上のレベルの高校を狙えたではないかと悔しくなった。我ながらゲンキンなものだ。なので、合格の結果を知った時は爆発するような嬉しさはなく、これまでの塾通いや受験による緊張からの解放感が強かった。
合格発表後、受験高校へ得点の開示が請求できる。合格したので関係ないかと思ったが、単純な好奇心で得点開示を請求した。請求といっても、小難しい手続きはなく、受験票を提示すれば得点を知る事ができた。そこで、とんでもない事実を知る。得点は、息子の自己採点を大きく下回り、合格ラインも僅かに下回っていたのだ。全身から汗が噴き出た。きっとぎりぎりで合格したに違いない。息子は「合格したからいいじゃん」と涼しい顔だ。
子供(息子だけか)の答え合わせは限りなく自分に甘いと痛感した出来事だった。