文章表現トレーニングジム 佳作「大人への階段」佐藤圭
第19回 文章表現トレーニングジム 佳作「大人への階段」佐藤圭
ワタシって、惚れっぽいんです。
高校でも、入学してすぐに恋しちゃいました。お相手は担任教師の数学の先生。ほぼ一目惚れです。今までの彼氏とは違い、先生は大人で??もう、ぞっこんです。
それからは、先生一筋。大好きな先生に褒められたいばかりに、朝から晩まで勉強に励み、夏休み前には学年トップになっていました。いやー、愛の力って、本当に凄いです。
先生は既婚者で、奥さんがいることも知っていました。??それでも学校では、ワタシの先生。
「ここが違うじゃん」と言いながら、私のノートの上で赤ペンを動かす、しなやかな指が好きでした。「お前、字が下手だなぁ」と、私を揶揄い、甘く笑う唇も大好き。テストの時に答案を覗きこみ、指で答案をコツンコツンと弾きながら《ここが違うぞ》と教えてくれる優しさも、背後に立った時、少しだけ恐さを感じる大人の気配も、全部、全部大好きだった。
先生だって私の気持ちに気づいていたでしょう――それなのに、なぜ離婚し、一級上の派手な先輩と結婚して、他校に異動しちゃうのよ。ワタシのことどう思っていたのかしら。なんで先輩だったのかなぁ。
センセーイ。最後の答え合わせ、まだ終わっていませんよお。